CACとは?3つの構成要素や計算式について解説!

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CACとは?3つの構成要素や計算式について解説!

顧客1人を獲得するためにかかったコストをはかる「CAC」を把握することは、自社のコスト削減や業務効率の向上に役立ちます。これまでCACを意識していなかった方は、CACを計算して自社の顧客獲得コストを導き出してみることをおすすめします。
そこで今回は、CACの3つの構成要素や具体的な計算方法などについてわかりやすく解説します。

目次

    CACとは

    「CAC」とは「Customer Acquisition Cost」の略称で、1社の顧客を獲得するためにかかったコストのことをいいます。日本語に直訳すると「顧客獲得費用」となります。
    CACは、顧客を獲得するために投資したコストの合計金額を、最終的に獲得できた顧客数で割り返すと導き出せます。

    CACを計算式であらわすと、次のような式になります。

    CAC = 総投資額 ÷ 顧客数

    例えばある企業が1年間に顧客を獲得するために100万円投資したとして、新規顧客を20社獲得できたとすると、CACは「100万円÷20社=5万円」となります。つまり、1社の新規顧客を獲得するために5万円かかっていると判断できます。

    CACが1社(1人)あたりの顧客生涯価値(LTV/1人の顧客や取引先が生涯のうちに自社のために支払う金額)を上回っていると、顧客を獲得するたびに損失が生じているということになります。

    CACの重要性とは

    CACの重要性とは

    前述のように、CACとは新規顧客を獲得するためにかかるコストを把握するための指標です。CACがLTVを上回っていると新規顧客を獲得できたとしても損失が発生しているため、「マーケティングや営業活動を行うたびに赤字になる」という状況に陥っているといえます。

    経営層は「新規顧客を獲得すればするほど良い」という考えにとらわれがちですが、顧客単価が低い取引先ばかりが増えると損失も膨らむ一方となり、必ずしも健全な経営を実現できているとはいえません。

    CACを適切に把握して自社が1社の取引先を獲得するためにかかっているコストを可視化することによって、現在の投資が適正かどうかを判断し、改善につなげることができます。
    このことから、CACを定期的に算出して今後のマーケティングや営業活動の方向性を判断する工程は非常に重要であるといえます。

    CACを構成している3つの要素

    CACは「Organic CAC」「Paid CAC」「Blended CAC」の3つの要素から成り立っています。どのような意味をもつものなのか、それぞれ詳しく解説します。

    Organic CAC

    Organic CACとは、「自然に増えていく顧客の獲得コスト」のことを指しています。例えばリピーターがECサイトで書いた口コミをもとに増えた顧客や、検索エンジンから自社のWebサイトにたどり着いた新規顧客はOrganic CACとみなされます。

    Organic CACは広告出稿などの費用をかけずに自然に増えた顧客であることから、獲得コストは安価に算出される傾向にあります。
    Organic CACを算出することによって、「広告出稿やキャンペーン施策によって獲得した新規顧客にかかったコスト(次項で解説するPaid CAC)」を正確に導くことができます。特別なキャンペーンを行ったりチラシ封入やWeb広告の出稿を行ったりした際は、それらのマーケティングがどの程度の効果をあらわしているか測定するのが一般的です。キャンペーンや広告出稿を行っている期間もOrganic CACは発生し続けており、「Organic CACによって獲得した顧客」と「キャンペーンや広告出稿によって獲得した顧客」は切り分けて測定することが重要になるためです。

    Organic CACを導き出す計算式は、次のとおりです。

    Organic CAC=自然増の顧客に要したコスト÷自然増の媒体で獲得した新規顧客数

    Paid CAC

    Paid CACとは、「なんらかの投資を行って獲得した新規顧客の獲得コスト」のことです。Paidには「支払う」などの意味があり、WebサイトやSNSなどへの広告出稿などはPaid CACの一部であるといえます。

    Paid CACは企業のマーケティング方針によってさまざまな種類があるため、各チャネル別に算出するのが一般的です。例えば「Googleへの広告出稿によるPaid CAC」「Facebookへの広告出稿によるPaid CAC」などのイメージです。

    前述の「CACの重要性とは」でもお伝えしたとおり、CACがLTVを上回ると損失が発生します。そのため、各媒体のPaid CACを算出してどの有料チャネルが自社の利益に貢献しているのかを詳細に把握することが大切です。

    Paid CACを導き出す計算式は、次のとおりです。

    Paid CAC=有料チャネルに支払ったコスト÷有料チャネルをきっかけに獲得した新規顧客数

    関連記事はこちらLTVとは?計算方法とLTV向上方法を徹底解説

    Blended CAC

    Blended CACとは、前述のOrganic CACとPaid CACを足すことによって導き出せる顧客獲得コストです。Blended CACを導き出す計算式は、次のとおりです。

    Blended CAC =(全ての営業コスト+全てのマーケティングコスト)÷新規顧客獲得数

    事業を始めたばかりの頃は自社の商品を購入してくれる母数が少ないため、新規顧客の獲得を最優先に営業やマーケティング活動を行うケースが多いといえます。しかし、ある程度の顧客数を獲得できた段階で期待どおりの利益が上がっていないと、「新規顧客の獲得を一旦ストップして黒字化をはかる」もしくは「あくまでも新規顧客の獲得を追求し続ける」という2つの選択肢が目の前にあらわれます。

    新規顧客を獲得できても、利益につながらないのであれば経営目標を達成することができません。とはいえ、顧客の獲得を鈍化させると、将来の成長の鈍化にもつながる可能性があります。そこでCACを細かく算出し、次の戦略を練ることが重要になります。

    「新規顧客は順調に獲得できているが、赤字が続いている」のであればOrganic CACを増やすための施策を打ち出し、Paid CACの最適化をはかってコストを下げる必要があるためです。

    CACの計算式

    ここまでにご紹介した3つのCACの計算式を、あらためてまとめてみましょう。

    • Organic CACの計算式
      Organic CAC=自然増の顧客に要したコスト÷自然増の媒体で獲得した新規顧客数
    • Paid CACの計算式
      Paid CAC=有料チャネルに支払ったコスト÷有料チャネルをきっかけに獲得した新規顧客数
    • Blended CACの計算式
      Blended CAC =(全ての営業コスト+全てのマーケティングコスト)÷新規顧客獲得数

    Organic CACは「自社の働きかけがなくても、顧客自らが行動することで増えていく新規顧客にかかった獲得コスト」、Paid CACは「自社によるなんらかの投資によって獲得した新規顧客にかかった獲得コスト」、Blended CACは「Organic CACとPaid CACを足した全ての顧客獲得コスト」を指しています。

    CACは下げれば下げるほど良い?

    CACは下げれば下げるほど良い?

    ここまで「CACがLTVを上回ると損失が発生する」とお伝えしてきました。このことから、一見すると「CACは下げれば下げるほど良い」といえそうです。
    しかし、実際にはCACをただ下げ続ければ良いというものではない点には注意が必要です。

    LTVがCACを大幅に上回っている場合、少ない投資で大きな利益を得ているようにも見えますが、「適切な投資ができておらず、新たな顧客の獲得機会を失っている」と捉えることもできます。
    例えば1人あたりの顧客獲得コストが10万円で、LTVが100万円だとすると、「30万円投資すればさらにLTVを引き上げられるのではないか」という経営判断もできるということです。

    企業の成長を促すためには、時に積極的な投資が必要になることもあります。CACは高すぎても低すぎても適正ではなく、「LTVがCACの3倍程度になるように投資する」のが目安になるとされています。
    投資額を適切にコントロールするためには、Organic CACやPaid CACの数値を詳細に把握しておく必要があるといえます。

    CACを低下させた事例

    とはいえ、CACが明らかに高すぎる状態であれば収益化が難しくなるため、低下させるための取り組みが必要になります。ここでは、CACを低下させた具体的な事例を2つご紹介します。

    ウーバー・テクノロジーズ

    スマートフォン向けアプリの「Uber」を利用したデリバリーサービスを展開するウーバー・テクノロジーズは、アプリのユーザーが新規ユーザーを紹介すると、紹介者と新規登録者の双方に無料チケットをプレゼントするというキャンペーンを実施しました。

    日本円にすると1人あたり2,000円ほどの投資でUberの新規ユーザーだけでなくドライバーの増加にもつなげており、CACの低下を実現しています。

    Dropbox

    クラウドストレージサービスを展開するDropbox社は、Web広告費用が高額化し続けていることから広告投資にかける費用を削減してCACを低下させるために「紹介キャンペーン」を実施しました。既存ユーザーがDropboxを紹介して新規ユーザーの登録を実現させると、紹介者と新規登録者の双方に利用可能な追加容量をプレゼントするという施策です。

    既存ユーザーの紹介というユーザーの自発的な行動は「Organic CAC」を増やし、紹介キャンペーンによって広告費用を削減する試みは「Paid CAC」を低下させるという効果を発揮しています。

    CACを活用してビジネスの健全度を計測するステップ

    CACを活用してビジネスの健全度を計測するためには、次の7つのステップを順番にクリアしていく必要があります。
    一つひとつのステップを丁寧にこなすことで、より正確性の高いCACを算出できます。

    1.対象期間の設定

    最初にCACの計測対象となる期間を設定しましょう。製品の特徴や業種・業態によっても異なるため、自社の実態に即した指標を設定することが大切です。
    例えば1年間、3か月、1か月などのスパンで計測することが考えられます。

    対象期間を設定する前に、自社の製品や業種についてあらためて洗い直しを行うのも良いでしょう。
    自社製品の特徴やメリット、業界全体の特徴や市場の状況などを加味した上で対象期間を設定すると、根拠のあるCACを設定しやすくなります。

    2.コストの計算

    対象期間を設定したら、その期間内のコストを計算します。自然増の新規顧客獲得のためにかかった全てのコストと、なんらかの投資によって新規顧客を獲得するためにかかった全てのコストを合計することで、期間内のコストを算出できます。

    例えば4月1日~4月30日の1か月間のCACを算出するにあたって、自然増の新規顧客獲得のためにかかったコストが30万円で、投資によって新規顧客を獲得するためにかかった営業コストが50万円であれば、CACを算出する基準となるコストの合計は80万円です。

    3.新規顧客の数を算出

    期間内のコストの合計額を算出できたら、次は新規顧客の数を算出します。設定した期間内に自然増で獲得した新規顧客数と、投資によって獲得した新規顧客数を合計することによって、期間内の新規顧客の数を明らかにできます。

    前述の例を参考にすると、4月1日~4月30日の1か月間で自然増によって獲得した顧客が6社、投資によって獲得した新規顧客が10社であれば、CACを算出する基準となる新規顧客数は16社となります。

    4.顧客数からコストを割り出す

    コストの計算と新規顧客数の算出が終わったら、顧客単位のコストを計算します。Organic CACやPaid CAC、Blended CACなど構成要素ごとのCACを計算式に基づいて算出してみましょう。

    前述のように、Paid CACによる新規顧客が発生している間にもOrganic CACによる新規顧客の獲得は続いているため、Organic CACとPaid CACの双方の影響を見極めることも大切です。

    さらに、Paid CACはチャネルごとに算出し、赤字を生み出しているチャネルと黒字化を達成できているチャネルを可視化しておきましょう。

    前述の例を使って、実際にBlended CACを計算してみましょう。4月1日~4月30日の新規顧客獲得コストが80万円、新規顧客獲得数が16社だった場合、Blended CACは次のようになります。

    Blended CAC=80万円(新規顧客獲得コスト)÷16社(新規顧客獲得数)=5万円

    この例では、指定期間内に1社の新規顧客を獲得するためのコストは5万円であるとわかります。

    5.LTVを超過していないか計算する

    各種CACを計算できたら、LTVを超過していないかどうかを計算する必要があります。CACとLTVを比較するためには、あらかじめ自社のLTVを算出しておく必要があります。

    LTVの計算式は次のとおりです。
    LTV(顧客生涯価値)=購入単価×購入回数×継続期間

    例えば1回の購入単価が2,000円の顧客Aさんが毎月1回の購入を3年間続けた時、LTVは次のようになります。

    AさんのLTV=2,000円×1回×36か月=72,000円

    仮に月2回の購入になると、LTVは144,000円ということです。

    この場合、1社あたりの顧客獲得コストは5万円だったので、CACはLTVを下回っており、Aさんの顧客獲得は利益を生み出すと判断できます。

    6.CACの回収期間を計測する

    算出したLTVがCACを上回っているようなら赤字を生み出すことはないため、今のままの施策を続けていても問題ないと判断できます。

    この場合は、CACをどの程度の期間で回収できるのかを計測しましょう。CACを回収できる期間が短ければ短いほど、企業としての利益が増える計算になります。

    前述の例であれば、1回の購入単価が2,000円で月1回、3年間継続して購入する場合のAさんのLTVは72,000円です。これに対して、1社あたりの顧客獲得コストは5万円でした。このLTVとコストの関係から回収期間を計算すると、必要な期間は次のようになります。

    回収期間=5万円(Blended CAC)÷2,000円(購入単価)=25か月

    この例では、Aさんの顧客獲得コストを回収するためには25か月かかり、残りの11か月分が利益になると考えられます。LTVがCACを上回っている場合でも、回収期間によって利益が左右されるため、詳しく検証することをおすすめします。

    7.CACの回収期間を短縮できるか検討する

    前述のように、CACの回収期間が短ければ短いほど企業にとっての利益は増加します。つまり、「CACの回収期間をどのように短縮するか」が将来的な企業の売上や成長を決める要素のひとつになるといえるでしょう。

    CACの回収期間を短縮するためには、「CACを低下させる」「LTVを増加させる」の2つの方法が考えられます。

    CACを低下させるための方法は、本記事でもご紹介したようなPaid CACの効率化をはかる施策が有効です。

    LTVは購入単価×購入回数×継続期間で決まるとお伝えしましたが、このなかでCACを短縮するために関係するのは「購入単価」と「購入回数」です。1回あたりの購入単価を増やすためにアップセルやクロスセルを提案したり、購入回数の増加を促すために一定回数の購入ごとに割引クーポンを配布したりするなどの施策が効果的です。

    まとめ

    自社のCACを適切に把握することで、獲得した顧客が生み出している利益を可視化し、改善・成長のための戦略策定に役立てられます。やみくもに新規顧客を獲得してもコストが上回っていると損失につながるため、定期的にCACを算出して自社の新規顧客獲得コストの状況を明らかにしましょう。

    CACとLTVは密接な関係にあり、回収期間を短縮するためにはLTVの向上にも取り組むことが大切です。CACの低下とLTVの向上のバランスを取りながら、企業の成長をはかりましょう。

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    この記事の執筆者

    大塚 陽生執筆者のXへのリンク
    株式会社ラクス
    ラクスクラウド企画部 オンラインプロモーション課
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    大塚 陽生

    広告代理店の営業&ウェブ広告の運用担当として6年間従事し、2019年4月ラクス入社。

    オンラインマーケティングチームに所属し広告運用や営業メールの運用を担当。

    メルラボでは、主に自身のメール配信実績をもとにした記事を作成。