インサイト営業の基礎知識やメリットを徹底解説
見込み客が気づいていない課題を明らかにして、課題を解決するための方法を提案するインサイト営業は、優良顧客の獲得や成約率アップなど多くのメリットがあります。しかしどのような点に注意すればインサイト営業を成功させられるのかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、インサイト営業の基礎知識やメリットについて徹底解説します。
目次
インサイト営業とは
インサイト営業とは、見込み客が潜在的に抱えている課題を見つけ出して、その解決策を提示することによって受注を獲得する営業手法です。
見込み客は自ら課題を発見して解決策を求めている場合もありますが、漠然とした悩みだけを自覚していて、本質的な課題がどこにあるのかを理解できていないケースも少なくありません。このような状況のままでは、課題を解決するためにどのような商品やサービスを導入すれば良いのか分からないまま時間が経過してしまい、なかなか具体的な契約にはつながりません。
そこで、見込み客の課題をヒアリングを通じて理解してもらい「課題を解決するためには自社の商品やサービスが必要だ」と結論づけてもらうことによって、受注を獲得するインサイト営業が注目されています。
近年ではインターネットの発達によって誰もが気軽に情報を手に入れられるようになったことから、顧客が自分で情報収集を行って購入する商品やサービスを検討する機会が増加しました。
しかし「自分で気がついていない潜在的な課題」を検索によって見つけることは難しく、自社が把握できていない課題を指摘し、解決に導いてくれる営業担当者は信頼を獲得しやすいといえるでしょう。
ソリューション営業との違い
ソリューション営業とは「見込み客の顕在化している課題を、自社の商品やサービスによって解決する営業手法」です。つまり「見込み客が自覚している課題に対して、解決策として自社製品を提案する」営業手法であり、見込み客が気づいていない課題にアプローチするインサイト営業とは本質的に異なります。
ソリューション営業は見込み客が既に自覚している課題に対してアプローチするため、自社の製品が競合他社よりも優れていることをアピールして受注につなげる商談のスタイルが多いといえます。
しかしインサイト営業は顧客が自覚していない課題を見つけ出してアプローチするため、営業担当者のヒアリング力や課題解決力が重要になります。
インサイト営業が関心を集める理由
従来は顧客が自覚している課題を自社の商品やサービスによって解決するソリューション営業が営業の基本でした。しかし誰もがインターネットを自由に利用できる現代では、顧客は自覚している課題の解決策を自分で見つけられるようになりました。
そのため、見込み客が課題を見つけた段階で導入する製品を検討できるようになってきており、明らかになっている課題に対してアプローチするソリューション営業は成果を上げにくくなってきています。
一方で、見込み客がまだ気がついていない課題は自然に気がつくことが難しく、インターネットを活用しても解決は容易ではありません。
そこで、成果を上げにくくなりつつあるソリューション営業に代わり、見込み客の課題を見つけ出して解決策を提案するインサイト営業が関心を集めるようになってきています。
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インサイト営業のメリット
インサイト営業のメリットとして、次の2つが挙げられます。
新規市場の開拓につながる
インサイト営業には、新規市場の開拓につながりやすいというメリットがあります。
既に明らかになっている課題を解決するソリューション営業は、競合他社が自社と似た機能をもった商品やサービスを展開している市場も多く、競争性が高いレッドオーシャンになっているケースが多くあります。特にシェアが高い競合他社が定着している市場に新規参入することは容易ではなく、大きな利益を期待しにくい場合も多々あるでしょう。
一方で、インサイト営業によって発見した課題は、市場で広く認知されていないケースが多いといえます。既に市場で「よくある課題」として認知されていたなら、顧客はインターネットなどの情報源を通じて解決策を見つけている可能性が高いためです。
つまりインサイト営業によって新たに発見した課題を解決するための商品やサービスを開発することで、新規市場となる「ブルーオーシャン」を開拓できる可能性が高まります。
価格競争の影響を受けにくい
インサイト営業によって見込み客が気づかなかった課題を解決できれば、自社に対する信頼は高まります。
「この営業は自分の気がつかない課題を見つけてくれる」と思ってもらえる存在になれれば、価格よりも自社への信頼が優先されて、他社より価格が多少高かったとしても契約してもらえる可能性が高まります。
加えて、インサイト営業によって発見された課題はまだ解決策が市場に浸透していない場合も多いため、価格競争自体が存在していないことも考えられます。「自社だけが課題を解決できる」という状況を作り出せれば、価格競争の影響を受けずに営業活動を展開できます。
インサイト営業のデメリット
インサイト営業にはさまざまなメリットがありますが、営業スキルの面ではソリューション営業よりも難易度が高いというデメリットが考えられます。
高い営業スキルが必要になる
ソリューション営業は課題が既に明らかになっており、課題に対して自社の商品やサービスを提案するという営業スタイルです。ヒアリングによって課題を見つけ出す必要はないため、提案のハードルはインサイト営業に比べてやや低くなります。
一方のインサイト営業は、見込み客自身が課題に気がついていない段階からさまざまな情報を拾い上げて、隠されている課題を探し出し、解決策を提示しなければなりません。
この点を考えると、インサイト営業はソリューション営業よりも高い営業スキルが必要になることがデメリットとして挙げられます。
インサイト営業の成功事例
最後に、インサイト営業の3つの成功事例をご紹介します。
大戸屋
大戸屋では、女性客の獲得が課題となっていたため、女性客がどのような潜在ニーズを抱えているのかをリサーチしました。その結果「定食屋に1人で気兼ねなく入りにくい、見られたくない」という女性客自身も気がついていないインサイトがあると分析し、女性でも気軽に入れる店舗にするための施策を展開しました。
店舗を2階以上または地下に構えることで、「定食屋に入るところを見られたくない」という女性の潜在ニーズにアプローチしています。
IKEA
インテリア用品などを販売するIKEAでは、「男性客が長時間の買い物を退屈に感じやすい」という潜在ニーズをキャッチし、男性客の満足度を高めるための施策を打ち出しました。
「MANLAND」と呼ばれる男性客が自由に利用できるスペースを店内に確保し、スポーツ観戦ができるテレビやピンボールを設置することで、男性客の関心を高めて来店時の心理的な負担を軽減するアプローチです。IKEAはこの施策によって訪問客の増加を実現しています。
フォルクスワーゲン
1950年代から1960年代ごろのアメリカでは、大型車がブームであり、小型の車体をアピールポイントとしていたフォルクスワーゲンは苦戦していました。
そこで「Think small(小さいことはよいことである)」というキャッチコピーを作り、「小型の自動車を使いたい人もいる」という潜在ニーズにアプローチし、「ビートル」という車種を定番化させることに成功しています。
まとめ
見込み客が気づいていない潜在的な課題を見つけて解決に導くインサイト営業は、ソリューション営業が成果を上げにくくなってきている現代において注目されている営業手法です。インサイト営業によって新規市場の開拓につなげることができれば、大きな利益を上げられる可能性があります。
とはいえ、インサイト営業は見込み客の課題を見つけるための高いヒアリング力が必要になります。他社の成功事例なども参考にしながら、組織の営業力を高めていくことが大切です。