生産性向上と業務効率化の違いとは?生産性を上げる方法などを解説
少子高齢化による労働人口の減少により、人材不足の課題を抱える企業は少なくありません。少ない従業員で円滑に業務を回すには、無駄な時間を削減して生産性を上げることが求められます。今回は、生産性向上と業務効率化の違いや生産性を上げる施策例について解説します。
目次
生産性向上と業務効率化の違い
生産性向上と似た言葉に業務効率化がありますが、厳密には意味が異なります。生産性向上はアプトプット(成果)の最大化を目指し、業務効率化はインプット(投資)の最小化を目指すものです。社内課題に取り組むには、生産性向上と業務効率化の違いを正しく理解することが重要です。ここでは、生産性向上と業務効率化の違いについて詳しく解説します。
生産性向上とは
生産性向上は、設備投資や業務課題の解決により成果を増加させる施策のことです。投資により作り出された成果が「生産性」であり、その成果を上げることが「生産性向上」にあたります。
生産性の種類は、以下の3つです。
資本生産性 | 保有する資本がどれだけ効率的に成果を作り出したかを定量的に数値化したもの |
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労働生産性 | 労働者数・労働時間あたりに作り出した成果を示す指標を数値化したもの |
全要素生産性 | 労働や資本を含むすべての要素を投入量として、産出量との比率を数値化したもの |
社内の生産性を算出するには、「企業の投資 ÷ 成果」の計算式で求められます。
業務効率化とは
業務効率化とは、既存業務の無駄を省いてコスト削減を目指す施策のことです。生産性向上の目的を達成する手段として、業務効率化があります。業務効率化を進めることで、少ない資源でも成果を上げやすい社内環境を作れるのが特徴です。
社内の業務効率が上がれば、結果的に生産性の向上を実現できます。生産性を上げるには、業務効率の改善が必要不可欠です。
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生産性向上や業務効率化が必要とされる理由
生産性向上や業務効率化が必要とされる理由には、次のようなものが挙げられます。
- 労働人口の減少への対策
- 海外企業との市場競争
- 働き方改革の推進
それぞれの理由について詳しく解説します。
労働人口の減少への対策
労働人口の減少への対策として、生産性向上や業務効率化が重要視されています。日本は少子高齢化による労働人口の減少が急激に進んでおり、2030年時点においては850万人を超える労働力が不足すると推計されています。
今後ますます人材獲得の難易度が高まり、労働力不足に直面する企業が増えることは間違いありません。減少する労働力のなかで、これまでと同じ生産性を維持するには、従業員一人ひとりのパフォーマンスを上げることが求められます。
参考首相官邸ホームページ「労働力不足解消と女性の経済的自立実現に向けて」
海外企業との市場競争
グローバル社会における日本企業の競争力の低下も問題視されています。日本生産性本部の調査によると、日本の一人当たり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中29位、時間あたりの労働生産性は38カ国中27位であることが判明しました。
先進国の中でもっとも低い水準で、グローバル市場競争で不利な状況が続いています。国際間の企業競争が激化するなか、一人当たりの労働生産性を向上させることが重要課題です。
参考公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」
働き方改革の推進
2019年4月に施行された働き方改革は、多様な働き方を自由に選択できる社会を目指すものです。働き方改革には9つのテーマがあり、そのひとつに「長時間労働の是正」があります。しかし、少子高齢化で労働人口の減少が進む日本では、新たに人材採用するのが難しい状況です。
人材不足を既存従業員の残業で対応し、長時間労働の是正が進まない企業も存在します。このような状況下で働き方改革に取り組むには、従業員一人ひとりの生産性向上が必要です。
生産性向上や業務効率化がもたらすメリット
生産性向上や業務効率化がもたらすメリットには、次のようなものが挙げられます。
- 労働環境改善による満足度の向上
- 人手不足への対策
- コストの削減
- 利益率の向上
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
労働環境改善による満足度の向上
生産性向上や業務効率化に取り組むことで、従業員満足度を向上できるメリットがあります。たとえば、業務を自動化したり作業工程を見直したりすれば、本来注力すべき仕事に集中できます。残業時間を改善でき、働きやすい環境が実現可能です。
また、残業が減ると定時に帰宅できるため、従業員のワークライフバランスが整います。従業員は、時間的かつ心理的な余裕が生まれ、働くモチベーション向上にもつながります。「この会社で働き続けたい」という気持ちが強まれば、人材流出も防げるでしょう。
人手不足への対策
今後数十年にわたり、少子高齢化で労働人口が減少し続けることが予測されています。人材獲得競争も激化し、人材採用もこれまで以上に難しくなるでしょう。生産性向上や業務効率化を重視しない企業は、いずれ人材不足に陥る可能性があります。これまで人が関わってきた仕事を自動化するなど、早い段階から生産性向上や業務効率化に対応することが重要です。
コストの削減
生産性を向上できれば、少ない資源で効率よく業務を回せるため、コスト削減につながります。例えば、個々のスキルを上げて効率的に業務を回せれば、稼働コストを削減できます。削減できたコストは、新システム導入や福利厚生に充てることで、労働環境の改善にもつなげられるでしょう。
利益率の向上
業務効率化を実現できれば同じ業務をより短い時間でこなせるため、利益率の向上が期待できます。利益が向上すれば業績が上がり、新システム導入や福利厚生など従業員に還元できます。労働環境を改善できるため、社内の士気が高まるなどの好循環が生まれるでしょう。多くの企業で目標とされる利益率の向上を実現しやすいのは、業務効率化に取り組むメリットといえます。
生産性向上のためにできる施策例
生産性向上のためにできる施策例には、次のようなものが挙げられます。
- 業務内容や業務プロセスの精査
- 従業員のスキルアップを促す
- 社内での積極的なコミュニケーションを促す
- 業務を効率化するツールの導入
- 業務の外注(アウトソーシング)
それぞれの施策例について詳しく解説します。
業務内容や業務プロセスの精査
生産性を向上させるには、業務内容や業務プロセスの精査から始めることが重要です。一人の業務は最適化されていても、部署単位や会社単位で確認すると無駄な作業が発生している場合も多いです。課題を発見した場合は、業務フローの改善や業務自体の廃止を検討しましょう。これらの施策で削減した時間を、ほかの作業に充てることで生産性を向上できます。
従業員のスキルアップを促す
生産性を向上させるには、従業員一人ひとりのスキルアップが必要不可欠です。たとえば、教育研修やセミナーを開催したり資格取得へ向けた支援制度を充実させたりするなど、従業員が新しい知識を習得するきっかけを設けることをおすすめします。従業員のスキルアップは目に見える効果が現れるまで時間はかかりますが、中長期的な施策として検討しましょう。
社内での積極的なコミュニケーションを促す
社内でのコミュニケーションを促すことも重要です。従業員同士でのコミュニケーションが活発化すれば、仕事上でのトラブルが発生しても迅速に対応できます。お互いに助け合える関係性になれば、帰属意識が高まり、チームワーク向上にもつながるでしょう。個々の従業員が責任を持って仕事に取り組むようになり、生産性も向上していくという好循環が生まれます。
業務を効率化するツールの導入
業務効率化の取り組みとして、従業員が抱える業務量を軽減できるITツールの導入もひとつの方法です。たとえば、ITツールを導入して定型的な作業を自動化したり、紙やハンコなどアナログ業務をデジタル化したりする方法があります。従業員がITツールに慣れるまでに時間がかかる場合もありますが、省人化できれば生産性向上を実現できます。
業務の外注(アウトソーシング)
生産性向上の取り組みとして、自社内でやるべき業務以外は外注するのも有効な手段です。外注すると委託費用は発生しますが、従業員はより生産性の高いコア業務に従事できます。自社の分野に関して知見が深い会社に外注すれば、業務の質が改善して無駄な作業を大幅に削減できることも多いです。限られた人材でも、最大限の成果を出せます。
生産性向上・業務効率化を進める際の注意点
生産性向上や業務効率化を進める際の注意点には、次のようなものが挙げられます。
- 生産性向上・業務効率化の目的を共有する
- 業務がマルチタスク化しないよう気をつける
- 業務フローなどの設計は現場の事情を理解して行う
それぞれの注意点について詳しく解説します。
生産性向上・業務効率化の目的を共有する
生産性向上や業務効率化を進める際、既存の仕組みを根本から変えなければいけないこともあるでしょう。従業員が現場で混乱しないように、「なぜ変化が必要なのか」「最終目的はどこなのか」など、変化を実行する目的を事前に共有しておくことが重要です。共有せずに実行すると、企業と従業員との間で認識のズレが生じ、目的達成が難しくなる場合があります。
業務がマルチタスク化しないよう気をつける
限られた人材で効率よく仕事を回すために、業務をマルチタスク化する企業も多いです。複数の業務を同時進行することで業務は効率化しますが、ひとつの仕事に丁寧に向き合えません。結果的にサービスの品質が落ち、利益率の低下を招くおそれがあります。生産性向上や業務効率化を進める際は、マルチタスク化しないよう気をつけましょう。
業務フローなどの設計は現場の事情を理解して行う
業務フローの改善は、現場の事情を理解する者が中心となって取り組むことが重要です。現場の事情を理解しない人が業務フローを再設計すると、新たなシステムが結局定着せずに失敗に終わることも多いです。現場で新しい業務フローを定着させるには、改善対象となる業務への知識を十分に備える従業員の意見にしっかり耳を傾けましょう。
まとめ
少子高齢化で労働人口が減少するなか、人材不足の課題を抱える企業が増えています。限られた人材で効率よく業務を進めるには、生産性向上と業務効率化に取り組むことが重要です。具体的な施策には、ITツールの導入や業務外注、業務プロセスの精査などが挙げられます。これらの施策例を参考に、社内の生産性向上と業務効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。