営業生産性を向上させる方法とは?低下の原因と6つの施策を解説
営業生産性とは、営業にかかった労働時間や人件費といったコストに対し、どれだけの成果が得られたかを確認する指標です。市場競争の激化などを受けて、営業生産性の向上が求められています。
本記事では営業生産性が下がる理由や高める施策、成功事例などを紹介します。
目次
営業生産性とは?
営業生産性とは、営業に費やした時間やコストに対し、どれだけの成果を上げられたのかを示す指標です。
ここでは、営業生産性の概要や計算方法、向上させる必要性について解説します。
営業生産性の計算方法
営業生産性では営業活動でかかった時間やコストをインプット、営業活動で得られた成果をアウトプットと呼びます。その計算は「アウトプット÷インプット」と表現され、具体的には以下の計算式で求めます。
- 営業生産性 = 業績÷ 費やした費用や時間
営業生産性は、どれだけ少ない労働量で多くの付加価値を生み出すことができたのかを確認するために使われます。付加価値に着目して業務効率化を考える指標といえるでしょう。
営業活動は商談以外にも多くの業務があり、営業を効率的に進めるためにはいかに付随する業務を削減するかが求められます。そのために、営業生産性の向上が注目されているのです。
営業生産性を向上させる必要性
企業経営では営業生産性の向上が欠かせません。変化の激しい時代に市場競争が激化しており、他社との競争に打ち勝つには、より少ないコストで成果を上げることが必要です。そのため、営業生産性を向上させることが市場で生き残るための条件ともなっています。
少子高齢化により労働人口が減少していることも、営業生産性の向上が求められる理由です。限られた労働力で現状より高い目標を達成するためには、営業生産性を高めることが不可欠とされています。
また、働き方改革の推進により労働環境の改善が迫られ、長期間労働を見直しても変わらない成果を出すことが課題となっていることも、営業生産性が注目される理由です。短くなった時間のなかでいかに時間をうまく使い、これまでと同じ売上を出すことが求められています。
営業生産性が下がる理由
営業生産性が下がる理由は、主に次のような4つの理由があげられます。
- 売上の目標設定が曖昧
- 管理能力に課題がある
- 情報管理がうまくできていない
- 社内業務が多い
それぞれ、詳しくみていきましょう。
売上の目標設定が曖昧
明確な営業戦略を立てず、目標設定が曖昧になると営業生産性は下がります。
営業活動で成果を上げるには、アプローチするターゲットを絞り込み、業界の動向などを調べて計画を策定しなければなりません。そのような対応をせず、相手先企業や業界のことをよく調べずに商談にのぞんだり、むやみにアポイントをとって見込みのない相手先と商談したりする営業スタイルでは、生産性を下げることにもなるでしょう。
営業担当のスキルや経験に依存していることも、営業生産性を下げる要因です。トップを走る担当者に売上を頼る状況になり、トップの担当者が退職や異動をしたら売上が急落するという状況にもなりかねません。
安定して継続的に営業生産性を上げるには、目標を明確にして営業の属人化を避ける対策が必要です。
管理能力に課題がある
営業生産性が下がるのは、営業活動の管理能力が不足していることも原因のひとつです。例えば案件の優先順位を決められないと、大きな売上が期待できるターゲットへのアプローチが十分にできません。
案件管理を効率化するツールを導入できていない、あるいは導入していてもうまく活用できないといったことも営業生産性を下げる原因となるでしょう。
情報管理がうまくできていない
情報管理がうまくできていないことも、営業生産性を下げる要因です。例えば、過去に接触した顧客と再度商談を行う場合、過去に行った商談の内容と結果がわからないと、うまく話を進めることができません。
顧客情報をしっかり整理できていない場合、必要な情報を探すときに時間を取られるでしょう。問い合わせなどの際に適切な対応ができず、成約のチャンスを逃すことにもなります。
社内業務が多い
営業の仕事は商談だけでなく資料作成や会議などの複数の業務があり、それらの工程に多くの時間を割かれると営業生産性が下がります。BtoB企業の営業が顧客への営業活動にかける時間は、勤務時間の約20%前後ともいわれています。
営業生産性を高めるには、社内会議や打ち合わせ、日報作成など顧客とは関連のない業務の比率を減らすことや効率化させるが大切です。目的が曖昧な会議や打ち合わせは時間ばかりを浪費して得るものが少なく、労働生産性を下げることになります。これらの業務を減らし、コア業務に集中できる体制を整えることが大切です。
営業生産性を向上させる6つの施策
営業生産性を高めるには、以下の施策が効果的です。
- 業務を標準化する
- 業務を自動化する
- 営業プロセスを可視化する
- タイムマネジメントを徹底する
- 成果に見合った報酬体系を作る
- ツールを活用する
各施策について、具体的に解説します。
1.業務を標準化する
営業方法やノウハウは属人化しやすいため、標準化してすべての営業担当に共有することが、組織全体の営業生産性を高めるコツです。
そのためにはまず、トップセールスの行動やコミュニケーションの特徴を洗い出し、営業担当の理想像を定義する必要があります。
トップセールスの取り組み方を参考にサービスレベルを設定して標準化することで、均一なアプローチができるようになります。全営業担当のパフォーマンスが向上するでしょう。
2.業務を自動化する
データ入力や日々のタスク管理など、コア業務以外の業務を自動化することで営業生産性の向上を図れます。
営業では、次のような業務を繰り返し行っているのが実情です。
- 顧客のリストの作成
- 提案書・見積書・契約書・請求書作成
- 問い合わせ対応
これらの業務について自動化できるツールを導入することで、顧客と対応する時間を増やし、質を高めることができます。
営業担当が顧客と向き合う時間が増えることで付加価値の提供に集中でき、営業生産性を高めるでしょう。
3.営業プロセスを可視化する
営業プロセスを可視化することで、業務の無駄や偏りを発見できます。可視化するのは「営業担当者の動き」と「営業活動の進捗」の2点です。
営業担当者の動きは、「誰が・何に対して・どのぐらい時間をかけて営業活動を進めているのか」を可視化します。
営業活動の進捗で可視化するのは、「どの商談が・どこまで進んでいるか、どの段階でどのくらい時間がかかっているか」です。
これら営業プロセスを可視化することで業務の偏りがわかり、集中すべき業務やすぐに判断すべき項目が明らかになります。
4.タイムマネジメントを徹底する
業務プロセスの可視化で時間がかかる業務を把握したら、タイムマネジメントを徹底することが必要です。タイムマネジメントとは、限られた時間のなかで業務をコントロールしながら計画通りに業務を遂行するスキルです。時間の使い方を変えることで、営業生産性が高まります。
まず、業務にかかる時間を計算し、顧客とのコミュニケーションの時間など、より重要な業務を優先的に行うよう時間を管理しましょう。
営業行動の管理も重要です。商談のために行った電話やメールなどアポイントの件数をチェックし、そのうち何件成約できたかを振り返って分析してください。
5.成果に見合った報酬体系を作る
営業生産性を高めるには、社員のモチベーション向上も欠かせません。そのため、成果に見合った報酬体系を作ることも効果的です。
成果に見合うだけの給与体系を整備し、さらにインセンティブ制度を導入することで、成果獲得に向けてモチベーションも高まるでしょう。
6.ツールを活用する
業務の自動化・効率化には、ツールの導入がおすすめです。営業を効率化するツールには、主に次の3つがあげられます。
- SFA
- CRM
- MA
SFAとは営業支援システムとも呼ばれ、営業部門における情報や業務プロセスを自動化し、営業活動が管理する情報全般をデータ化するシステムです。データをもとに営業活動を行い、成果につなげることを目的としています。
CRMは、顧客情報や取引履歴などのデータを一元管理し、顧客のニーズに適した提案を行うツールです。分析した情報を活用し、顧客のニーズに応じたアプローチができます。
MAは、顧客へのマーケティング活動を自動化するツールです。マーケティング施策の実施により発生するメール配信やWebサイトの分析など、さまざまな作業を自動化して効率化を図ります。具体的には、新規顧客の関心度に応じて最適な情報をメールで自動送信したり、わずかなニーズを掘り起こして優良顧客へと導いたりすることができます。
業務を効率化するツールについては、以下の記事も参考にしてください。
営業生産性を向上させた事例
営業生産性を向上させるには、実際に成功させた事例を参考にするのもおすすめです。ここでは、営業生産性の向上に成功した具体的事例を2つ紹介します。
営業DXサービスの活用
NECグループのNECソリューションイノベータ株式会社は、コロナ禍により展示会やセミナーを開催できなくなり、例年と比較して見込み客の獲得数が70%減少しました。
そこで、「営業1人当たりの生産性を上げる」というテーマのもとに開始したのが、営業DXです。その一環として、マーケティング部門と営業部門が協力し、プロセスの改善やテクノロジーによって業務効率を高めるプロジェクトをスタートさせました。
プロジェクトは少ない人数でいかに成果を上げられるかが課題となり、そのためにはマーケティングから営業に至る全工程を1つの大きなプロセスとして、全体の最適化を目指す必要があります。
戦略では顧客接点をすべてデジタルに切り替え、見込み客を獲得する戦術として、以下の3つを実施しました。
- ウェビナーの全社展開
- Webサイトを顧客接点としてコンテンツを磨き上げる
- デジタルイベントの活用
営業プロセス全体のDXを進めた結果、対前年比で1.2倍もの新規見込み客を獲得できました。そのうち、デジタル接点が99.7%を占めており、営業DXの実施がいかに有効であったかがわかります。結果として見込み客獲得は2.6倍に増え、獲得コストの70%削減に成功しました。
参考:NECソリューションイノベータ株式会社「営業・マーケティングプロセスの統合とデジタル」
顧客接点のデジタル化
株式会社三菱UFJ銀行は営業生産性の向上を目指し、2021年より営業DXサービス「Sansan」の利用を開始しています。Sansanは法人向け名刺管理サービスで、名刺情報をデジタルで管理するとともに、人脈情報の属人化を防ぐツールです。全行員の名刺・接点情報を企業の情報資産として組織的に管理・活用できます。Microsoft 365とも連携し、Sansanの名刺情報をメールの連絡先として利用可能です。
三菱UFJ銀行は、デジタライゼーションを中期経営計画における最重要施策として位置づけ、社内の業務プロセスのデジタル化による生産性向上に取り組んでいます。
同行ではリモートワークや時差勤務を利用する社員が拡大しており、「スマートワーク@MUFG」として多様な働き方を選択できるよう推進しています。
「スマートワーク@MUFG」は「ムダな業務・時間の徹底排除を通じて挑戦できる時間を創出し、従業員がプロフェッショナルとして働きがいを実感できる企業」を目指す取り組みです。
営業部門でSansanを活用することで、リモートワーク下における効率的な営業活動を実現し、名刺情報の共有による組織的な営業活動も推進しています。
参考:Sansan株式会社「営業DXサービス「Sansan」が三菱UFJ銀行の全行員約3万名に利用拡大」
まとめ
営業生産性とは、営業に費やした時間やコストに対し、どれだけの成果を上げられたのかを示す指標です。具体的な数値は、アウトプット÷インプットの計算式で求められます。
市場競争に生き残り、働き方改革を推進していく上でも営業生産性の向上が欠かせません。
営業生産性の向上には、業務の標準化や自動化、営業プロセスの可視化などが求められます。また、ツールの活用も効果的です。
自社の営業生産性を高めるには、実際に成功させた事例を参考にするのもおすすめです。企業の成長・発展に向けて、営業生産性を高めましょう。