MA(マーケティングオートメーション)とは?解決できる課題やメリット、ツールの選び方を紹介
マーケティング部門は対応しなければならないプロセスが数多くあるため、全てのリードに手が回らないという悩みを抱えている企業も多いでしょう。苦労して獲得したリードを営業部門に引き渡しても、なかなか案件化につながらないというケースも少なくありません。そんな時は、MA(マーケティングオートメーション)を導入することで状況を大きく改善できる可能性があります。そこで今回は、MA(マーケティングオートメーション)の基礎知識や解決できる課題、ツールの選び方などについてご紹介します。
目次
MA(マーケティングオートメーション)とは
MA(マーケティングオートメーション)とは、獲得したリードとの関係を深めて案件化に導き、営業部隊に引き渡すまでの一連の業務について、ツールやソフトウェアで自動化をはかることを指しています。
比較的短期で購入に至りやすいBtoCビジネスとは異なり、BtoBでは契約が決まるまでに必要なプロセスが多く、検討が長期にわたるケースが多い傾向にあります。そのため、プロセスごとに「その時点で意思決定に関わっている相手」に対して訴求効果の高い施策を実行する必要があります。しかし営業担当が受注確率の定かではないリードとの関係構築を担うと手間も時間もかかるため、案件化につながらなかった場合にそれまでかけたコストが無駄になることも考えられます。部門全体の生産性を著しく下げてしまうリスクを生み出す可能性も否定できません。
MA(マーケティングオートメーション)を導入すれば、各リードに適した施策を打ち出して効果的に興味・関心をひきつけ、確度を高めるための作業を自動化できます。人の手を介さずにリードに訴求できるため、生産性を大幅にアップできる可能性が高まります。
MA(マーケティングオートメーション)で自動化できる機能
ここでは、MA(マーケティングオートメーション)で自動化できる機能についてご紹介します。
まず、MA(マーケティングオートメーション)の主な役割として、以下の4つが挙げられます。
- リードジェネレーション → 見込み客の新規獲得
- リードの一元管理 → 見込み客(リード)情報の一元管理
- リードナーチャリング → 見込み客との継続的なコミュニケーションと検討伺い
- リードクオリフィケーション → 見込み客の絞り込み・選定
以下で詳細に見ていきましょう。
リードジェネレーション
まず、リードつまり見込み客の情報を獲得するためのリードジェネレーション機能です。
Webサイトなどに設置が可能なWeb登録フォームやメルマガ登録フォームを比較的自由に作ることができます。企業名やアドレス、電話番号など、取得したいリード情報の項目を組み合わせて登録フォームを作成し、Webサイトに貼り付ければ、自動的に自社に興味を持った見込み客(リード)を獲得することができます。
登録フォームは、お問合せ・資料請求・無料トライアル・メルマガ登録・ホワイトぺーパーダウンロードなど、見込み客の温度感に合わせて複数用意するのが良いとされていて、それぞれのフォームを通過したリードを、マーケティングオートメーションの機能であるリード管理機能にて、温度感別にリスト分けして管理をしていくとその後のナーチャリング活動やクオリフィケーションの活動が円滑に進みます。
リードの一元管理
続いて、MA(マーケティングオートメーション)で自動化できる機能のひとつに、「リードの一元管理」があります。
企業はさまざまなビジネスシーンでリードを獲得していますが、全てのリードが適切に把握されているケースはそれほど多くありません。例えば展示会で入手した紙媒体の名刺が、もらったまま活用されずに名刺ケースや机のなかで眠っているということもよくあります。
異なるツールに分かれて保管されているデジタルデータについても、同様のことが言えます。例えば、Webサイトのお問合せページから送られてきた情報やメルマガ登録によって獲得した読者情報を、一覧で確認することはできません。ほかにも広告経由のアクセスやWebサイトの訪問者情報などリードを獲得する経路は多種多様であり、自社に存在するリードの全体像を把握できていないケースは非常に多く見られます。
MA(マーケティングオートメーション)を利用することにより、これらのリード情報を一元管理できます。「リストから漏れてフォローできなかった」という見落としを防いだり、ヒアリングの内容を記録して次回のアプローチに活かしたりできるので、営業活動を効率よく進められるでしょう。
リードナーチャリング
3つ目は見込み客との継続的なコミュニケーション・検討伺いを行うリードナーチャリング機能です。
リードナーチャリングとは、見込み客のうち、潜在層に対して興味・関心を促進するための商品・サービス情報や利点、お役立ち情報を発信しながら、検討タイミングを伺う活動を指します。特にBtoB企業の検討期間は、比較的長くなりやすいこともあり、検討タイミングを伺っている間、見込み客に忘れられずに良好な関係性を維持し続ける事が重要になってきます。
この関係性維持の活動を、より効率的かつ効果的に行うために、読み物としてのメルマガ配信や、メール配信を入口としたセミナー・サービスサイト・Web記事コンテンツなどへの誘導を目的とした情報発信を、継続的かつ最適なタイミングで提供していきます(=メールマーケティング)。
その結果として、リードナーチャリングによる接触が、見込み客の検討タイミングと合致することで、潜在層から純顕在・顕在層へと引き上げることができます。
リードナーチャリングとしてのメールマーケティング
MA(マーケティングオートメーション)ではリードの現在の検討レベルや行動パターン別のカテゴライズなども可能なので、同じカテゴリーに所属するリードに対して一斉配信メールを送るなど、さまざまなメールマーケティングのアプローチを実行できます。
メールによる営業活動は、リードとの関係を深めるうえで重要です。リードの検討レベルがあがるたびに異なる内容に変更して送信するステップメールや、特定の条件を満たした人を対象とするターゲティングメールなど、アプローチの方法は多岐に渡ります。
ツールを利用すれば、送信したメールの開封率やリンクのクリック率などの統計データも自動的に算出されるため、より効果の高いメールを作成する改善施策も効率的に行えます。どのようなタイトルが読んでもらいやすいのか、リンクの配置はどの部分が適切かなど、さまざまな検証に役立つでしょう。
加えて、「リードがいつWebサイトを訪問したのか」「長く滞在していたページはどこか」などの情報も自動的に取得可能です。リードの購入パターンを分析することで「情報収集の段階ではコラムを配信し、導入を検討しているタイミングで商品をアピールする」などの柔軟な対応が容易になります。
リードクオリフィケーション
最後の4つ目は、リードの絞り込み・選定を行うリードクオリフィケーション機能です。
リードクオリフィケーションとは、見込み客を潜在層→純顕在層→顕在層へと検討ステージ別に絞り込んでいく活動を指します。
検討ステージの分類は、各社さまざまで、
例えば、メルマガ購読申込<メルマガ開封<メルマガ内URLクリック<ホワイトペーパーダウンロード<資料請求<無料トライアル申し込み<商談申し込み
といったように見込み客のアクション別に設定することもあります。
他にも、MA(マーケティングオートメーション)ツールによっては、「スコアリング」機能といったものが付いているものがあります。これは、メールの開封やクリック・Webサイトへの訪問・資料ダウンロード・セミナー参加etcといったアクションそれぞれに点数を付け、その総合点数によって見込み客の検討ステージを把握することができる機能です。
このように通過フォームやスコアリング機能を利用して、見込み客を検討ステージ別に絞り込んだうえでリスト化できれば、これらのリストの見込み客に対して興味関心に合わせた適切なマーケティングアクションをおこなう事ができるようになります。
それぞれの検討ステージに合った情報提供などのアクションを実施することで、より高いステージへと顧客が進む手助けをしていくことができます。
以上が、MA(マーケティングオートメーション)の代表的な4つの役割です。
MA(マーケティングオートメーション)を活用すれば、小規模な組織で新規顧客の創出になかなか手が回らない場合でも、少ないリソースで大きな成果をあげられる可能性が高まります。
MA(マーケティングオートメーション)について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
関連記事はこちらメール配信システムとMAツールって何が違うの?選び方のポイントもご紹介
関連記事はこちらマーケティングオートメーションとは。役割、メリット、導入のポイントを解説!
MA(マーケティングオートメーション)が注目されている理由
インターネットの普及により誰でも手軽に情報収集が可能になる以前、消費者が商品やサービスの情報を得るための媒体はテレビや雑誌、新聞などのマスメディアが中心でした。販売チャネルも現在ほど多くなく、店舗に行って商品を購入したり、電話やカタログの通販を利用したりする購入方法が主だったといえます。
マーケティング施策もテレビCMや雑誌・新聞広告などを活用したものが主流であり、商品の質を見定めるためには販売側から提供される情報を吟味するしか方法はありませんでした。
しかし、ECサイトやSNSなどが発達して誰でも気軽に情報を発信できるようになったいま、消費者の行動は大きく変化しています。現在では、企業のWebサイトで事前に情報収集したり、インターネット上に書かれている商品のレビューを参考にしたりして購入するかどうかを決定することがほとんどです。消費者が能動的に情報を仕入れに行く時代が到来したことから、マーケティングの手法も大きく転換せざるを得ない状況にあるといえるでしょう。
例えばWebサイトの訪問状況を把握して一人ひとりの興味・関心に合わせた商品をすすめたり、SNSを通じて自社の商品をターゲットに的確にアピールしたりする施策は、認知度や購買意欲の向上に有効です。しかし、Webを活用したマーケティング施策はやらなければならないことが多く手間も時間もかかるため、手が回らずリードが競合他社に流れたり、休眠顧客になったりしてしまうことも少なくありません。
そこでMA(マーケティングオートメーション)を活用し、業務を効率化する試みが注目されています。ツールを導入することにより、自動的に商品の最新情報をメールで知らせる、長期間アクセスがないリードに訪問を促すメールを送るなどの作業を自動化できます。そのため、これまでカバーしきれなかったリードにも的確に訴求し、新規顧客の創出につなげることが可能になります。
MA(マーケティングオートメーション)で解決できる課題
MA(マーケティングオートメーション)で解決できる課題には次のようなものがあります。
商談数(営業部門への案件数)
マーケティング部門から営業部門にリードを直接引き渡すと確度の低いリードへの対応を余儀なくされるため、有効な商談数が増えにくいでしょう。
そこでMA(マーケティングオートメーション)を取り入れると、ツールを利用してリードとの信頼関係を十分に築いたうえで営業部門に引き渡せるため、スムーズに商談につながる確率がアップします。
商談の質向上
リードとの関係が温まり、すぐにでも提案に入れる状態で商談に進めるため、一件ごとの商談の質の向上が期待できます。中身の濃い商談ができれば契約に至る可能性も高まり、会社全体の売上向上にもつながるでしょう。
リードの有効活用
展示会や日々の営業などで獲得したリードの中には、将来の有望顧客が眠っている可能性があります。しかし、全てのリードに対応するためには社内のリソースが不足している場合も多いでしょう。結果的に、一度失注した後にフォローする余裕がないまま休眠顧客となってしまうことが多いのも事実です。
MA(マーケティングオートメーション)を活用することで、フォローが行きわたっていないリードや関係が切れかけているリードにもアプローチできるため、獲得したリードを持て余すことなく有効活用できます。
生産性
営業部門が移動時間をかけて契約につながる望みが薄い商談を何度も繰り返すと、部門全体の生産性を低下させるだけでなく、本来フォローしなければならない既存顧客や確度の高い顧客に充てられる時間が減少することにもつながります。
期待値の高いリードに絞って商談に集中できる環境を整えることで、無駄な移動時間や交通費などのコストを削減し、生産性を向上させられます。
情報の活用
MA(マーケティングオートメーション)でデータを一元管理することによりリードの情報を蓄積できるため、次回以降のアプローチに活用できます。さらに過去のヒアリング情報に基づいて送信するメールの内容を作成したり、相手が抱えている課題の解決につながる商品を紹介したりすることで興味・関心や購買意欲を高められます。
MA(マーケティングオートメーション)を導入した際に期待できる効果・メリット
ここでは、MA(マーケティングオートメーション)を導入した際に期待できる効果やメリットについてご紹介します。
購買意欲を高めることができる
リードの検討状況がどの段階にあるのかが明確になっていないと、十分に購入意欲が高まっていない状態で商品の購入をすすめてしまう可能性があります。まだ「興味がある、調査している」段階で必要以上に商品をアピールすると、押しつけられているように感じてしまう場合もあるでしょう。
そこでMA(マーケティングオートメーション)を活用してリードの行動を把握し、興味・関心に合わせた適切な情報を流すことで、自然に購買意欲を高めることが可能になります。
見込み客の取りこぼしを防げる
「問合せがあったものの契約にはつながらなかった」「名刺交換をしただけで購入はしていない」「メールマガジンの登録があるが成約には至っていない」などのリードは、放置すると競合他社に流れてしまう可能性が高まります。
MA(マーケティングオートメーション)を活用し、引き続き製品に興味があることが分かれば、必要としている情報を積極的に提供することで顧客になってもらうための適切なアプローチができ、見込み客の取りこぼしを防げます。
属人化しない営業組織を作れる
営業部隊はそれぞれの営業マンが担当顧客を受け持つため、顧客の情報が担当外の社員から見えにくく、属人化しやすい傾向にあります。受注率の高さにも差があり、平均化することは簡単ではありません。成果があがらない営業マンを育てるにも教育コストがかかるため、時間や費用の観点から現実的ではない場合も多いでしょう。
MA(マーケティングオートメーション)を導入すると、ツールを活用してリードとの関係を十分に深めたところで営業部隊に引き渡せるので、受注率がそれほど高くない営業マンでも比較的簡単に契約を獲得できます。加えて組織全体でリードの情報を共有できるため、ブラックボックス化を防止できるというメリットもあります。
受注率が向上する
インサイドセールス部門が確度を高めたリードは、「限りなく受注できる可能性が高い」状態にあります。いままで受注できるかどうか分からないリードに割いていた時間の無駄を省き、確度の高いリードに集中して提案できるため、受注率の向上につながります。
MA(マーケティングオートメーション)を導入する際の注意点
MA(マーケティングオートメーション)は便利な一方で、注意点もあります。具体的に見ていきましょう。
効果が出るまでに一定の期間が必要
MA(マーケティングオートメーション)の効果が現れるまでには、一定の期間がかかるのが一般的です。
リードとの信頼関係を構築するには時間をかけて相手のニーズを引き出し、適切な情報を提供するなど「ぜひこの企業から購入したい」と思ってもらうためのステップが必要です。そのため、短期的に成果をあげたいと思っても上手くいかない可能性が高いといえます。
売上が立たない「種まき」の期間も、人件費やリードに提供するコンテンツの制作費用は継続的に発生します。施策が実を結んで利益として返ってくるまで、先行投資できる体力があるかどうかを検討することが大切です。
コンテンツがないと施策が回らない
リードの興味・関心をひきつけて購入意欲を高めるためには、一人ひとりに合わせて適切な情報を提供しなければなりません。どのような情報を与えるのが有効なのかをさまざまな観点から吟味して、あらゆるニーズに対応できる、複数種類のコンテンツを用意しておく必要があります。
リードからの感触がどれだけ良かったとしても、提供できるコンテンツがなければアピールは難しくなります。コンテンツ不足で施策が回らないという事態を防ぐためにも、十分に時間をかけて準備することをおすすめします。
データ管理が手間
MA(マーケティングオートメーション)を最大限に活用するためには、データ管理の徹底が必要不可欠です。展示会や営業先で入手した名刺やメルマガの登録リスト、過去の問合せ客などからリード情報を拾い上げ、データベース化することで初めて具体的な施策を実行できます。
しかし名刺などの紙媒体の情報は1件ずつ手入力で登録しなければならず、データで所持していたとしても、各ツールで管理しているデータを集約してMA(マーケティングオートメーション)に移行する手間がかかります。さらにリードの情報は組織変更や移動によって都度変更される可能性もあるため、定期的に更新しなければならない点にも注意しなければなりません。
MA(マーケティングオートメーション)導入の際に気をつけるべきこと
MA(マーケティングオートメーション)を効果的に活用するには、相応のスキルを持った人材の確保が大切です。スキルを持たない状態で業務に臨むと、ツールを使いこなせず、思ったように成果が出ない可能性が高まります。
SEO対策やSNSの運用、メールマーケティング、リードに具体的な行動を喚起させるための導線設計、施策後の効果測定など、マーケティング担当に求められるスキルは多岐にわたります。こういった施策の実務経験を積んだ人材を配置することで、高い効果を発揮できるでしょう。
加えて十分なリソースを確保することも重要です。MA(マーケティングオートメーション)を効果的に運用するには6~7人程度が必要ともいわれており、ランディングページ制作や顧客管理など、作業別に専任者を置くことが望ましいといえるでしょう。
とはいえ、少人数の組織ではリソースが限られており、2~3人程度で運用せざるを得ない状況にある企業も少なくありません。その場合は、少人数でも扱えるかどうかに注目してツールを選定することをおすすめします。
さらに、MA(マーケティングオートメーション)はリードを十分に獲得できていることを前提としているため、もしリードが少ないのであれば集客する手段も同時に構築する必要があります。運用が始まるとリードに対して配信するコンテンツも用意しなければならないため、マーケティング部署の体制が整っていないのであれば、強化をはかることも大切です。
MA(マーケティングオートメーション)の導入事例
ここでは、MA(マーケティングオートメーション)の具体的な導入事例を見ていきましょう。BtoBとBtoCでは目的や指標が異なるため、どちらで活用するのかを明確にしておくことが大切です。
BtoB
BtoCに比べると、BtoBは比較的MA(マーケティングオートメーション)の活用が進んでおり、導入事例も多くあります。例として、マルケトを利用した2つの事例をご紹介します。
さくらインターネット株式会社:案件化数40倍を達成
レンタルサーバーやクラウドサービスなどのコンピューティングリソースを扱うさくらインターネット株式会社は、部門間の連携を改善して機会損失を減少させるためにマルケトを導入しました。
これまでマーケティング部門と営業部門で起きていた意識のすれ違いを解消するために「MA(マーケティングオートメーション)を活用して新規訪問を獲得する」という共通のミッションを打ち出すところからスタートし、最終的にはMQLからの案件化数が40倍にまで増加しています。
さくらインターネット 組織間のボトルネック解消で“未来の売上”を創造
LINE Pay株式会社(加盟申込数が約140%に増加)
モバイル送金・決済サービスを運営するLINE Pay株式会社は、マルケトを導入することによって、中小規模の商店に対する自社サービスの認知度向上と各加盟店のスムーズなサポートを実現しました。
マルケトと電話やメールを連携した積極的なマーケティング施策を展開することにより、加盟申込数を前年比約140%に増加させています。さらにSFAツールとの連携によりサポート体制の強化を実現し、手厚い対応が可能となりました。
LINE Pay 新たな決済手段「キャッシュレス決済」普及に挑むために選んだマーケティングパートナーMarketo Engage
BtoC
BtoBビジネスへの活用が主流ではありますが、MA(マーケティングオートメーション)はBtoCにおいても高い効果を発揮します。
株式会社ビズリーチ(月別のログインユーザーが139%増加)
転職サイトのビズリーチは、「レジュメがなかなか企業に検索・閲覧されない」「スカウトメールが少ない」などの会員が抱えている悩みを解決するためにマルケトを導入し、自社が持つユーザーデータと連携しました。マーケティング施策の実施やプロダクトの改善も同時に行った結果、スカウトの受信・返信数、レジュメ更新者数などが大きく改善し、導入前より会員にとってメリットの大きいサービスを提供できるようになっています。
さらにこの施策によって月別のログインユーザー数は139%増加し、メール送信は平均開封率が37.4%を達成するなど、ビズリーチというサービスの業務改善にも大きく寄与する結果となりました。
現在は働き方改革などの影響でこれまで転職サイトを利用してこなかった会員が増えたことで、ミスマッチが原因の脱会などの新たな課題が浮上しているため、KGIの転換やサービスのシンプル化、エンゲージメント向上を目的とした組織の再編成などに取り組んでいます。
ビズリーチ 企業の成長フェーズに合わせ、KGIも組織編成もフレキシブルに見直していきます。
特定非営利活動法人かものはしプロジェクト(メール配信作業時間1/3削減、開封率4倍、CTR2倍を達成)
かものはしプロジェクトは、「子供が売られてしまう問題」を解決するために活動する認定NPO法人です。支援者の半数は個人であり、これまでの「主催イベントをきっかけに会員数を増やす」という手法では、遠方に住む人や来場する時間的余裕がない人を取りこぼしてしまうという課題を抱えていました。
そこでマルケトを導入し、「寄付者を育成する」という考え方に基づいて、リードとの関係構築に注力し始めました。従来、手作業で実施していたイベントのリマインドメールやイベントのアフターフォローなどが自動化されたことにより、メール配信に要する作業時間は1/3にまで減少し、開封率は約4倍の70~80%にまで改善しています。クリック率も2倍に向上したことから、実に8倍の成果をあげられるようになりました。
かものはしプロジェクト Marketoでドナーとの関係を深めながら、生涯寄付単価を引き上げていきたい
MA(マーケティングオートメーション)導入前に整備しておくべき事項
ここでは、MA(マーケティングオートメーション)の導入前に整備しておくべきことについてご紹介します。
社内コンプライアンスの見直し
MA(マーケティングオートメーション)を本格的に導入する前に、社内のコンプライアンスを見直しておきましょう。認識が不足している部分は社内で共有し、社内規定にも新たに記載を加えるなどして正しく整備することが重要です。
コンプライアンスは直訳すると「法令遵守」と表されますが、一般的には社内規定やモラルを守って業務を遂行すること全般を含めた意味で使われます。リードを管理する際は個人情報を扱うため、万が一情報漏えいが発生するなどのトラブルが起きれば企業としての信用を大きく損なうだけでなく、プロジェクトの責任者や経営者が刑事罰を受ける可能性もあります。
MA(マーケティングオートメーション)に関わる主な法律は、「個人情報保護法」と「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の2種類です。
個人情報保護法
個人情報保護法は、個人情報の適切な取り扱いについて定義している法律です。生存する個人に関わる情報を開示することを禁止しており、全事業者が対象になります。個人情報に該当する範囲は広く、「氏名、生年月日、居住地、マイナンバー、通話の録音データ」など多岐にわたります。
法律違反にならないためにも、個人情報を利用する目的をWebサイトに掲載したり、配信メールの文末に記載したりして、利用目的の通知・公表を徹底しましょう。加えてアクセス経路などを把握する意図でクッキーを取得するため、「サービス品質向上のためにクッキーを利用すること」「行動履歴を解析し、個人情報に紐づける可能性があること」の2点をプライバシーポリシーなどに掲載します。
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律は、迷惑メール根絶の観点から広告メール(特定電子メール)を規制する目的で制定された法律です。特定電子メールを送信する際は、事前に相手から配信許可(オプトイン)を取得しなければなりません。例えばメルマガを配信したい場合は、配信登録によって同意を得ずに一方的に送信すると法律違反とみなされます。
さらに特定電子メールの内容には「配信者の氏名(名称)、所在地、配信解除方法の案内、問合せ先、配信解除を通知できること」を記載しなければなりません。解除の通告を受けた際は、速やかに配信リストから除外する義務があります。
関連記事はこちら【メルマガの法律】特定電子メール法って何?適用範囲と4つのポイントとは
MA(マーケティングオートメーション)の運用方法
MA(マーケティングオートメーション)の運用は、「マーケティング施策の策定・実行」と「効果測定・改善」のサイクルを繰り返して進めていきます。検討レベル別にカテゴライズしたリードや特定の行動をとったリードに対して、次に期待するCVを実行してもらうための施策を打ち出して、ツールに落とし込んでいく「シナリオ作成」の作業が肝になります。
例えば「Webサイトに5回以上訪問したことがあり、問合せ履歴がないリードに無料セミナーの招待メールを送る」などのシナリオを設定して、該当者が現れると自動的に施策が行われるように準備します。シナリオを実行した後は開封率やCV率などの効果測定結果から改善施策を立ててフィードバックを行い、次のアプローチで効果が高まるかどうかを確かめます。
運用の際は事前に効果測定の指標と目標値を設定し、達成率をはかると良いでしょう。例えば「メールの開封率〇〇%」「新規リード〇〇件獲得」などの目標を定めて、到達できた施策は継続し、できなかった施策は特に力を入れて改善すると効率的に運用を進められます。
MA(マーケティングオートメーション)の選び方
MA(マーケティングオートメーション)を選ぶ際は、次の3つのポイントを意識することが大切です。
目的を決める
「MA(マーケティングオートメーション)を導入する目的はどこにあるのか」を事前に明確にしておきましょう。機能が豊富なツールを選定することも大切ですが、目的が明確になっていないままツールを選ぶと、必要な機能が備わっていなかったり、使わない機能が多すぎたりして効果的な運用が難しくなります。
「商品の認知度をあげたい」「購入率を高めたい」「資料の取り寄せを増やしたい」など具体的な目的を決めておくことで、自社にとって必要な機能を把握したうえで有効なツールを選定できます。
CVを決める
最終的に達成したいCVがどれなのかを決めておくことは重要です。「メルマガに登録してもらう」「お問合せフォームから連絡を受ける」「無料体験版を利用する」などの具体的なCVをあげていき、それぞれに優先順位をつけましょう。
サービスによってはフォームの数により利用料が異なる場合もあるので、正確なコストを算出するためにもなるべく正確にCVを想定することが大切です。
ターゲットについて考える
Webサイトを訪れるリードによって、関心の度合いもさまざまです。なんとなく気になって訪問してみただけの人もいれば、課題を解決するための方法を調査していたり、実際に商品やサービスを比較検討していたりする人もいます。
全てのターゲットに同じ施策を打ち出しても、訴求効果は高まりません。それぞれの段階に合わせたアプローチを実行して初めて施策が有効になるため、ターゲット像を明確にしておきましょう。
MA(マーケティングオートメーション)と組み合わせて取り入れるべき考え方・ツール
ここでは、MA(マーケティングオートメーション)と組み合わせて取り入れたい考え方やツールを紹介します。
Hubspot
世界一のシェアを誇り、世界中の企業で採用されているMA(マーケティングオートメーション)ツールです。Hubspotは2006年に設立された企業で、ベンチャー向けのBtoBを展開していたブライアン・ハリガンが「オウンドメディアやSNSを活用したマーケティングが重要である」と認識していたことから開発されました。
それまではテレビCMなどのツールが主体でしたが、Hubspotの登場によってインサイドセールスを活用した顧客の創出という概念が誕生し、今日では一般的な営業手法になりつつあります。Hubspotは営業において重要な「マーケティング」「カスタマーサービス」「セールス」をまとめて完結できるプラットフォームとして世界の企業に重宝されています。
マーケティング施策を自動化する機能のほかに、ランディングページの作成機能、リード管理、SEO支援など、搭載されている機能は多種多様です。
Hubspotには「Marketing Hub」をはじめとした4つの機能が用意されており、それぞれ個別で無料体験版を利用できます。全ての機能を集約した統合型プラットフォームも無料試用できるため、特にこだわりがなければこちらを使うと良いでしょう。
「CMS Hub」以外の3機能は月額6,000円~のプランが用意されており、小規模な組織でも使いやすい金額に設定されています。まずはスモールスタートしてみたいという企業でも導入しやすいのが魅力です。
Marketo(マルケト)
マルケトは2007年に創業したマルケト社によって提供されているツールです。しばらくの間は日本に拠点がありませんでしたが、2014年には日本法人が誕生し、順調にシェアを獲得しています。顧客との関係を深める「リードナーチャリング」と、リードの優先順位を定める「スコアリング」に重点が置かれたプラットフォームで、営業のタイミングを逃さずにアクションを起こせます。
直感的な操作が可能な点も特徴的で、セグメント条件をドラッグ&ドロップで設定できるなど、快適な操作感が多くのユーザーに支持されています。さらに世界で1,800以上ものオンラインコミュニティが存在しているなど、情報交換の場が提供されている点も見逃せません。加えて、約700社の関連ソリューションと連携している使い勝手の良さも魅力といえるでしょう。
マルケトの料金プランは公表されていませんが、データベースのサイズに応じて変動するようです。プランは「SELECT」「PRIME」「ULTIMATE」「ENTERPRISE」の4種類があり、基本機能のみの使用から大規模な運用まで幅広く対応しています。
SATORI
SATORIはSATORI株式会社が開発した国産ツールで、日本国内では900社以上が導入しています。「リードを増やす」ことに重点を置いており、リードに満たない匿名段階のユーザーを個別に特定してスコアリングしたり、アプローチしたりする機能が特徴です。
メールの配信管理や休眠顧客への再アプローチなど一般的な機能は一通り網羅しており、シンプルで扱いやすいユーザーインターフェースなので、不慣れな人でも扱いやすいツールといえるでしょう。料金プランは初期費用が300,000円、月額費用が148,000円とシンプルな設計です。
SATORIでは定期的に外部セミナーやイベントを開催しているため、マーケティングに関するノウハウを学べます。さらにツール紹介セミナーもあるので、SATORIの活用事例やデモンストレーションを通じて導入を検討することも可能です。
b→dash
株式会社フロムスクラッチが開発したツールで、マーケティングにおける集客や販促活動、CRMなどの一連の業務を統合インターフェース上で管理できます。業界初の「Data Palette(データパレット)」という技術を採用しており、データの取り込みや変換をプログラミング不要で行えるため、導入や運用に必要な工数を削減できるのがメリットです。
b→dashにはリードの行動を分析するためのアクセス解析機能や改善施策を打ち出すためのA/Bテスト機能、CRM機能など、マーケティングを進めるうえで必要な機能が揃っています。必要な機能だけを選んで実装できるため、使わないアイコンが操作の邪魔をすることはありません。後から拡張もできるため、運用規模が拡大した場合でも安心です。
料金は公表されておらず利用の際は問合せが必要ですが、基本機能を全て利用できる「b→dash」と、ライトプランの「b→dash Lite」が用意されています。
MA(マーケティングオートメーション)ツールの選び方についてはこちらの記事もご覧ください。
関連記事はこちらMAツールってどれがいいの? 比較の際に考えるべきポイントをご紹介
関連記事はこちら「結局MAツールって何を使えばいいの…?」MAツール比較7選
MA(マーケティングオートメーション)に関連する用語
最後に、マーケティング分野でよく使われる、MA(マーケティングオートメーション)に関連する用語を紹介します。
ホットリード
興味・関心が高まっているリードのことです。
積極的に情報収集をしている段階にあるため、自社とも比較的頻繁にコンタクトがあり、有効な商談につながりやすい傾向にあります。
MQL
「マーケティング施策を通じて獲得したリード」のことです。「Marketing Qualified Lead」の頭文字をとってMQLと呼ばれるようになりました。
主に営業部門やインサイドセールス部門に引き渡すリードのことを指しています。
SQL
マーケティング部門が引き渡したMQLの中でも、案件化すべきかどうかの判断を必要とするリードのことです。「Sales Qualified Lead」の頭文字をとってSQLと呼ばれています。
インサイドセールス部門が設置されている企業であれば、電話などでリードにコンタクトをとり、ヒアリングを通して営業部門がフォローした方が良い案件かどうかをあらためて判断します。
SAL
SALは「Sales Accepted Lead」の略称で、MQLの中でも特に成約につながりやすいと期待されているリードのことです。
実際に訪問して提案できる段階まで進んでいるケースが多く、スムーズに受注に結び付くことも少なくありません。
スコアリング
リードの行動や属性にスコアをつけて数値化し、優先順位を設定する手法のことです。
行動は「資料を請求したら+5点、無料会員登録したら+10点」、属性は「課長なら+8点、年収500万円以上なら+3点」などのイメージです。スコアが高ければ高いほど重点的にフォローする必要があり、特定の点数を上回ると「ホットリード」に変わります。
ABM
ABM(アカウント・ベースドマーケティング)は、「アプローチする価値やポテンシャルが高い企業かどうか」を判定し、ターゲットとする企業を定めたうえで適切なアプローチを行う考え方です。
一般的に、マーケティングは個人のリードに対して行う方法が主流ですが、ABMでは企業という「面」に対してアプローチして最大の利益を得ることを目的としています。
ステータス
ステータスは、リードの確度に応じて定められたランクのことです。
企業によって表現やランクの種類は異なりますが、「A(受注決定)」「B(確度高)」「C(検討段階)」「D(情報収集中)」「E(未フォロー)」などのイメージが一般的です。
ポテンシャル
ポテンシャルは、ターゲットとする業種などを設定する際に洗い出した「業界や業種の規模や潜在購買者数」「担当別の成約率や売上」などの情報を指します。
一般的に規模が大きい業界ほど潜在的な需要は高く、商圏の拡大が狙えます。反対に、規模の小さいニッチな業種でシェアを獲得する戦略をとることもできるでしょう。
まとめ
今回はMA(マーケティングオートメーション)の基礎知識や解決できる課題、ツールの選び方などについてご紹介しました。MA(マーケティングオートメーション)を導入することにより手間や時間のかかるマーケティング施策の多くを自動化できるため、効率よく営業活動を進められます。
ツールを選定する際は目的やターゲット、CVなどを事前に絞り込んでおくと、自社が本当に必要としている機能を見極めやすくなります。コンプライアンスにも注意しながら、施策の実行と改善を繰り返して効果の高い運用を目指しましょう。