営業戦略とは?立てる際のポイントや注意点について解説
自社の売上を達成し安定的な経営を行うためには、綿密な営業戦略を立てて営業活動に臨むことが大切です。とはいえ、どのように営業戦略を立てれば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、営業戦略を立てる際のポイントや注意点について詳しく解説します。
目次
営業戦略とは
営業戦略とは、企業が自社の売上目標を達成するために立案する計画のことです。
単にマーケティング戦略だけを指すのではなく、自社ブランドの認知や販路を拡大するためのブランディングも営業戦略の一種だとされています。
「営業戦略」と「営業戦術」は似たような意味に捉えられることが多い言葉ですが、実際には少し意味合いが異なります。「戦略」とは「目標に到達するための長期的な計画を立案した上で、目標に向かって現在取らなければならない行動や方向性のこと」を指し、「戦術」は戦略を実行するための具体的な手法のことを指します。
さらに具体的な例を挙げると「1年間で商品Aを1,200個販売する目標を達成するために、今月は商品Aを100個売ろう」という考え方が戦略、「今月中に商品Aを100個販売するためにキャンペーンを実施しよう」という行動が戦術です。
経営戦略との違い
経営戦略とは企業や組織が、継続的に経営し続けるための中長期的な経営目標を達成するためのものを指します。
例えば「将来を見据えて、次の3年間で取引先を20社増やす」という経営戦略を立てたとき、その目標をどのように達成するのか具体的な方法を考える必要があります。この「具体的な方法」として挙げられるひとつに営業戦略が当てはまります。
経営戦略を達成するために検討された営業戦略を実施し、1年ずつ目標を達成することによって、中長期的な計画が達成されるということです。
営業戦略を立てる際のポイント
営業戦略を立てる際は、いくつかおさえておきたいポイントがあります。ここでは、特に重視される7つのポイントについて解説します。
資源を集中させるポイントを明確にする
営業戦略を立てる際は、「資源を集中させるポイント」を明確にすることが大切です。
資源の集中については「選択と集中」という有名な言葉があり、マーケティングの分野では「自社が得意な分野を明らかにした上で、経営資源を得意分野に集中して投じることが大切だ」という教えがよく用いられています。
やみくもに資源を分配するのではなく市場のなかで自社が得意とする範囲を見極めて集中的に資源を投じることで、利益を効率よく最大化できると考えられるでしょう。
自社の経営資源をどの分野に投じるのかについては、四半期や半期などの比較的短いスパンで考えることが望ましいと考えられています。「3ヶ月間はこの分野に集中的にリソースを割り当てる」と決めたら、ひとつの分野に自社のリソースをまとめて注ぎ込むことで大きな成果が出やすいといえるでしょう。
例えば100%ある自社のリソースを20%ずつ5つの分野に割り当てると、自社が苦手な分野が2つあった場合に40%分のリソースが十分な成果を上げられずに終わってしまいます。そこで100%のリソースを自社が最も得意とするひとつの分野に投じることで、利益を最大化しようとする考え方です。
戦略は端的にまとめる
自社の営業戦略を立てる際は、できるだけ端的にまとめることが大切です。営業戦略を簡潔でわかりやすい言葉であらわすことによって組織内での理解を促し、スムーズに浸透させるためです。
組織が一丸となって同じ目標に向かっていくためには、それぞれの従業員が自社の営業戦略を正しく理解して行動する必要があります。わかりにくい営業戦略を立ててしまうと従業員の理解がぶれやすくなることから、誰でも理解しやすい端的な営業戦略を立てることが重要です。
例えば「前年度よりも売上をアップさせる」といった抽象的なものではなく、「前年度に比べて主力商品Aの受注を〇%増やし、売上を〇%アップさせる」といった数値を交えた営業戦略が有効だといえるでしょう。シンプルでわかりやすい戦略を立てることで、従業員が「今自分がどのような行動を取らなければならないのか」を把握できます。
KPIを設定する
営業戦略を策定するとともに、KPIも忘れずに設定しましょう。
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語になおすと「重要業績評価指標」という言葉です。KPIは「企業や組織が最終的に設定している目標(ゴール)に向かって、どの程度順調に達成できているか」をはかる指標になります。
KPIの指標に用いられるものとしては、売上達成率や新規顧客の獲得数などが挙げられます。
例えば「1年間で5,000万円の売上」を目標に掲げている場合、KPIの指標に売上達成率を用いることで、ゴールに対して現在どの程度の進捗なのかをひと目で把握できます。
想定よりも進捗が思わしくなかったり、経営層が想定していたビジョンとは異なる方向に進んでいたりする場合は、直ちに営業戦略を見直す必要があるでしょう。
KPIは業界や業態によって採用される指標もさまざまであり、自社に合ったものを選択することが求められます。
過去のデータを分析する
営業戦略を立てる際、過去のデータを詳細に分析することも重要です。データ分析によって市場のニーズを的確に捉えられれば、最小限のリソースで最大の成果を得ることが可能だといえます。
過去の営業・マーケティング活動で蓄積してきたデータを活用できればより精度の高い分析が可能であり、過去のデータを使用する場合にはSFAやCRMの存在が大きな助けとなるでしょう。
まずはデータを取得できる環境を整えることが効率的な営業戦略の立案につながると考えられるため、ツールを導入していないのであれば導入の検討から始めるのも手段のひとつだといえます。
市場調査を入念に行う
新規市場に参入する際は、市場調査を入念に行った上で経営戦略を策定しましょう。
市場の特徴や競合他社の存在によって、効果の高い営業戦略は異なります。
例えば、競争性が高い市場に参入するのであればカスタマーサポートの強化などの戦略が効果を発揮すると考えられます。一方で市場が比較的安定しているなら、ターゲット層を絞り込んで自社の営業活動に集中することで効果的にシェアの拡大ができるでしょう。
顧客のニーズを把握する
精度の高い営業戦略を完成させるためには、顧客のニーズを把握することが重要です。
顧客が市場において何に興味を示しているのかを把握できれば、自社の売上を効率的に向上させることができるといえます。
とはいえ、顧客のニーズは表面化しているものだけとは限りません。購買履歴や属性などのデータを積極的に活用・分析することで、潜在ニーズを明らかにすることも重要です。
クロージングのタイミングを見極める
顧客の関心が高まった適切なタイミングでクロージングを行うことは、受注を逃さないためにも大切です。
商談を行った後は「購入するつもりがあるのかどうか」を必ず確認し、まだ購入に至らないようなら継続的にコミュニケーションを取り続け、購入の意思があるようなら契約を結ぶ必要があります。
購入する意思があるかを確認しないまま商談を終えると、せっかく顧客の関心が高まっていても時間があくことで顧客の関心が薄れ、結果的に失注してしまう可能性もあるため注意が必要です。
営業戦略を立てる際によく使われる分析手法
続いて、営業戦略を立てる際によく用いられる3つの分析手法をご紹介します。
SWOT分析
SWOT分析とは、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素をもとにして行う分析手法です。
具体的には「競合他社や法令、トレンドなどの自社の影響が及ばない外部環境」と「自社商品やサービスの品質、価格、ブランド価値などの内部環境」の2つの観点をプラスとマイナスの側面に分類して分析し、マーケティング戦略の策定や経営層の決定に役立てるために用いられます。
SWOT分析では、外部環境と内部環境の2つの観点を明確にわけることによって自社が対応できる範囲が明らかになるというメリットがあります。
自社の行動によってコントロールできる部分を明らかにすることでリソースを効率的に活用できるようになり、コスト削減効果も期待できるでしょう。
SWOT分析を行う際は、3C分析などの分析手法と一緒に実行するとさらに精度の高い分析を行うことが可能だとされています。
関連記事はこちらSWOT分析の重要性と具体的な方法。無料パワポテンプレ付き
3C分析
3C分析とは、「Company」「Customer」「Competitor」の3つのCの頭文字を取った分析手法のことです。
自社、顧客と市場、競合他社の3つの観点から自社の現状分析を行うことを目的としています。
「Company」では、自社の商品やサービスの強みがどこにあるのかを分析します。
売上や市場における獲得シェア、営業実績などのデータを抽出することで、自社が顧客にアピールできる強みを明らかにできます。加えて、強みと同時に弱みを洗い出すことも大切です。
「Customer」では、顧客と市場の分析を行います。
自社のターゲットとなる顧客の年齢や性別、興味・関心などを明らかにすることで、自社がアプローチするターゲットを明確化できます。さらにターゲットを詳しく分析することによって顧客のニーズが明らかになり、自社が市場に提供しなければならない価値を把握することにつながるでしょう。
「Competitor」では、自社と競合他社を比較して違いを分析します。
競合他社の売上や営業手法、利益などを抽出して、自社とどのような違いがあるのかを明らかにしましょう。
競合他社は自社と似通った商品やサービスを提供している「直接的な競合」と、商品やサービスの性質は違っても生み出す価値が似通っている「間接的な競合」の2種類にわけられ、分析の際は双方の違いを意識することが重要になります。
関連記事はこちら4P分析と4C分析にてマーケティングを分析する手法
4P分析
4P分析とは、「Product」「Price」「Place」「Promotion」の4つのPの頭文字を取った分析手法です。
製品、価格、流通、プロモーションの4つの視点で競合他社との比較分析を行うことで、自社の商品やサービスについての強みや弱みを明確にできます。
「Product(製品)」では、競合他社よりもターゲットのニーズに寄り添った商品を提供できているか、高いデザイン性であるか、アフターサポートが充実しているかなどについて分析を行います。
「Price(価格)」では販売価格を分析します。自社のターゲットは価格をいくらに設定すれば積極的に購入を検討するのかを考えて、市場に適した価格で提供することが重要になるためです。 「高くもなく、安くもない」適度なバランスに設定された価格を見極めましょう。
「Place(流通)」では販売経路と販売手法を分析し、ターゲットに自社の商品やサービスを確実に届けるための戦略を決定します。
どの場所で商品やサービスを販売すれば最もターゲットが手に取りやすいのか、展開する店舗数は何店舗が適切なのか、競合他社の立地はどうか、などを分析します。
「Promotion(プロモーション)」においては、自社の商品やサービスの認知度を高めるための販促手法を分析します。例えば広く浅いターゲットにアプローチする必要があるなら、マスメディアへの広告出稿などが向いているでしょう。
一方で、ターゲットを限定的にするのであればDMやリスティング広告の利用を検討する必要があります。
関連記事はこちら3C分析のプロセスやメリット、分析のポイントについて解説
営業戦略を立てる際の注意点
営業戦略を立てる際は、次の2つのポイントをおさえることが大切です。
多角的な視点をもって分析する
営業戦略を立てるにあたっては分析を行いますが、外部環境と内部環境のどちらか一方に偏った分析を行ってしまうと、分析の精度が低下するおそれがあります。
常に多角的な視点をもって分析することで、分析の精度を一定に保つことが大切です。
PDCAサイクルを回す
一度設定した営業戦略はそのまま使い続けるのではなく、PDCAサイクルを回して定期的に見直すことが重要になります。
適切なKPIを設定して進捗が計画どおり進んでいるかを把握し、進んでいないのであればどこに問題があるのかを見極めて軌道修正を行いましょう。
「戦略を実行し、実行した戦略で十分な成果を出せているかを確認して、必要に応じて修正する」といった一連のサイクルを繰り返すことで営業戦略の精度が高まりやすくなります。
営業戦略を立てるための3ステップ
営業戦略を立てるためには、「作戦」「戦術」「計画」の3ステップを意識する必要があります。 ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説します。
1.作戦
1つ目のステップは「作戦」で「営業戦略を立てた際に設定した目標に到達するために、取り組まなければならないこと」を指します。
作戦には大きくわけて「見込み客を獲得して関係構築を行う」「クロージングを行う」「既存顧客との関係を維持する」の3つがあります。
目標を達成するための売上を確保するには、見込み客を獲得して受注確度を高め、成約に結びつけなければなりません。見込み客の受注確度が十分に高まった後は適切なタイミングを逃さずにクロージングを行って、自社の商品やサービスを販売することも大切です。
加えて、受注したからといってそのままにしてはいけません。既存顧客の存在は安定的な売上を確保する上で重要であることから、顧客離れを防ぐための対策を考える必要があります。
「既存顧客が自社に求めていることは何か」を常に意識しながら、ニーズを満たし続けられるようなアプローチを行いましょう。
2.戦術
2つ目のステップは「戦術」です。戦術とは「目的を達成するためにどのような手法で作戦を推し進めていくのかを考案するプロセス」のことです。
戦術には「手段」「効果指標」「実行者」の3つの要素が含まれています。
「手段」とは、作戦を実行するための方法です。例えばテレマーケティングや飛び込み営業などは、古くから続くアナログな手法であるといえるでしょう。一方で、自社メディアの運営やメルマガ配信などは比較的新しいデジタルな手法です。
目的を達成するための手段では、アナログとデジタルの手法を適切なバランスで組み合わせることが望ましいとされています。
「効果指標」は、前述の手段を実行した後に効果測定を行うための指標のことを指します。手段の実行後は必ず効果測定を実施し、期待どおりの成果があらわれているかを測定した上で、必要に応じて改善策を講じることが求められます。
「実行者」とは、文字通り「手段を実行する人のこと」です。「誰が行うのか」を明確にすることで責任の所在を明らかにすることができ、「誰がどのような行動を起こさなければならないのか」を各々が把握しやすくなります。
3.計画
最後のステップは「計画」です。作戦や戦術が固まったら、「誰が」「いつまでに」「どのような成果を出すために」行動を起こすのかをスケジューリングする必要があります。具体的な計画が完成した後、実際に計画に沿って行動を起こしていきます。
しかし、全ての行動が計画どおりに進むことは多くありません。定期的に進捗を確認し、計画とどの程度の差異が生まれているのかを確認した上で、実現可能な範囲に都度修正していく必要があります。
同時に「なぜ計画と差異が生じているのか」「どのように改善すれば目標に近づくのか」を十分に考慮して、計画の完成度を高めることが重要です。
まとめ
企業が自社の売上目標を達成するための営業戦略は、自社の商品やサービスを効率的に販売して売上を拡大するために重要です。市場に新規参入する際はやみくもに商品を販売するのではなく、営業戦略に基づいた綿密な展開を行うことをおすすめします。
営業戦略を立てる際は、作戦、戦術、計画の3つのステップが重要になります。策定した営業戦略は定期的な見直しを行い、必要に応じて改定しながらより精度の高いものを作り上げていくことが大切です。