リピーター獲得の方法とは?事例や戦略などについてわかりやすく解説
リピーター獲得は、効率良く売上を上げるために重要です。自社の商品・サービスを継続して利用してくれるリピーターを増やすことで、効率的に収益アップを図れます。
本記事ではリピーター獲得により得られるメリットや、企業の成功事例を紹介します。
目次
リピーターとは
リピーターとは、自社の商品・サービスを一度だけでなく繰り返し購入している、もしくは契約を継続している顧客のことです。リピーターは企業の売上を支える存在であり、リピーターを増やすマーケティングが企業の成長のために欠かせません。
企業の全売上のうち8割は、全顧客のうち2割の優良顧客が占めているという法則があります。「パレートの法則」と呼ばれ、売上に貢献する優良顧客、すなわちリピーターの獲得が効率的なマーケティングにつながることを示しています。
リピーター獲得による具体的なメリット
リピーターを獲得することで、マーケティングのコストを削減する、売り上げが安定するといったメリットがあります。
リピーター獲得によるメリットについて、詳しくみていきましょう。
新規顧客を集めるよりコストが低い
リピーターの獲得は、新規顧客の獲得よりもコストを削減できるのがメリットです。新規顧客を開拓するのは、リピーターを獲得・維持するよりも時間や手間、コストがかかります。「1:5の法則」では、新規顧客獲得にかかるコストはリピーターの獲得・維持にかかるコストの5倍かかるとされています。費用対効果のためにも、リピーターの獲得は重要です。
既存顧客との良好な関係を構築してリピーターを増やすことで、コストを抑えながら効率的に売上アップを図れるでしょう。
購入を継続してもらえることで売上が安定化しやすい
リピーターは継続して購入・利用してくれるため、売上が安定する傾向にあります。顧客の離脱を5%抑えることができれば利益率が25%向上するという「5:25の法則」があり、リピーターを増やすことで売上のアップが見込めるでしょう。
これにより、LTV(Life Time Value・顧客生涯価値)が向上するのもメリットです。LTVとは、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの期間にどれだけの利益をもたらしてくれるかを表す指標です。近年はサブスクリプションといった継続が鍵となるビジネスモデルの市場が拡大しており、LTVが重視されています。
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リピーターの口コミが新規顧客獲得につながる
自社の熱心な顧客となったリピーターは、周囲の人に商品やサービスを積極的に奨めてくれることが期待できます。消費者は企業の宣伝広告よりも実際に使った人の感想に注目する傾向があり、評判を見てから購入を検討するケースも少なくありません。
リピーターはSNSや口コミサイトなどネットを通して感想を投稿することも多く、情報を拡散してくれる可能性があります。その結果、新規顧客の獲得への貢献が期待できるでしょう。
顧客はなぜリピーターになるのか
リピーターを獲得するには、「顧客はなぜリピーターになるのか」を考えることが大切です。商品・サービスに価値を感じてもらえる、接触する機会が多く親近感を持ってもらえるといった点があげられます。
詳しい内容をみていきましょう。
商品・サービスや企業に価値を感じているから
顧客がリピーターになるのは、商品やサービス、企業・店舗に価値を感じるからです。「また購入したい・訪れたい」と思ってもらえることで継続的な利用につながります。
価値を感じる部分は、価格や接客方法、クオリティなど、顧客ごとに異なります。すべてを満たすのは難しいものの、どれかひとつでも突出するものを作ることで、競合との差別化を図れるでしょう。
商品・サービス、企業に価値を感じてもらうために有効なのが、顧客のファン化です。商品・サービス、企業ブランドのファンとなった顧客は、ロイヤリティ(信頼や愛着)を高め、商品・サービスの利用頻度を増やします。積極的にファンを増やす施策を行うことで顧客ロイヤリティを高めることも、リピーターを獲得するために効果的です。
接する機会が多く親近感を持ってもらえているから
既存顧客には、商品・サービスに接触する機会を増やしてもらう施策を行うことが大切です。何度も商品・サービスを目にすることで顧客の心に残り、また利用しようという気持ちを促します。これは、「ザイオンス効果」というものです。
ザイオンス効果は、特定の人物や物事に何度も繰り返し接触することで、好感度が高まっていくという心理的状態を指します。
例えば、何度も企業に足を運び、コミュニケーションを図る営業担当者は親近感や好感を持たれるようになるというケースも多いでしょう。
ザイオンス効果はマーケティングでも重要です。積極的な広告や施策で顧客にアプローチして顧客との接点を増やすことで、ザイオンス効果が発揮されます。顧客には、商品・サービスや企業に対する親近感や好感が生まれるでしょう。
リピーターを獲得できない原因とは
顧客がリピーターにならない原因も把握しておきましょう。商品・サービスに満足できなかったり、再度購入するきっかけがなかったりすると、顧客は離れてしまいます。
ここでは、リピーターを獲得できない原因を解説します。
商品・サービスに満足してもらえていない
商品・サービスに満足できなければ、顧客は継続して利用しようと考えません。そのため、顧客アンケートやネット上の口コミなどから顧客満足度を調査することが大切です。
アンケートでは改善すべき点を質問するのもよいでしょう。満足できないのは、商品・サービスの内容だけとは限りません。従業員の対応が良くない、サイトが使いにくいなど、さまざまな原因が考えられます。
顧客の声を拾い上げて課題を抽出し、改善していくことで顧客満足度の向上を図れます。
再度購入するきっかけがない
一度利用しても、その後その商品・サービスに触れる機会がないと、競合の商品・サービスを見てそちらを利用可能性があります。特に競合が積極的に顧客へのアプローチを展開し、接触の機会を増やしていれば、顧客はそちらを選ぶことにもなるでしょう。
アプリやメルマガなどを使い、定期的に商品・サービスのお知らせを届けることが大切です。
店舗で販売している場合、再訪する機会がないこともリピーターを獲得できない原因です。顧客が店舗を訪れる理由にはなんらかのきっかけがあります。同じ商品がほしくなった、偶然近くを通りかかったなどがあるでしょう。
このようなきっかけは店舗から作ることもできます。一例として、DMやメールで新商品の販売や割引セールの案内を送る、クーポンを配信するといった方法があげられます。
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リピーター獲得のための施策例
リピーターを増やすには、効果的な施策を行わなければなりません。顧客がリピーターになるのは、商品・サービスや企業に価値を感じたり、商品・サービスを知る機会が多かったりする場合で、そのための施策が必要です。
リピーター獲得のための施策例をいくつか紹介します。
メルマガ配信やフォローメールで顧客との接点を増やす
リピーター獲得には、メルマガやメールを活用し、こまめに情報を発信することが大切です。クーポンなどお得な情報を発信して、顧客との接点を増やし、定期的に自社を思い出してもらう機会を作りましょう。
商品・サービスや企業への信頼や愛着を高め、ファンとなる可能性もあるでしょう。
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SNSを活用して顧客とのコミュニケーションを図る
近年はインターネットが普及し、顧客と触れ合う機会も増えています。SNSを活用して積極的に顧客との接触を増やすのもリピーター獲得に効果的です。
継続的にコンテンツを投稿する、動画を配信するなどして情報を提供します。新商品の紹介やセールの案内を提供するほか、企業や店舗の近況を定期的に配信するのもよいでしょう。継続的に情報を提供することで顧客の印象に残り、親近感を高めます。
リピーター獲得施策を行う際の注意点
リピーターを獲得する施策を行う際は、いくつか注意したい点があります。リピーター獲得の施策とともに新規顧客獲得を実施するとき、チャネルを分けてバランスをとるといった点です。
ここでは、注意点を2つ解説します。
リピーター・新規顧客とでチャネルを分ける
集客する際のチャネルは、リピーターと新規顧客で分ける必要があります。それぞれの商品・サービスや企業ブランドに対する認知には差があり、提供する情報は異なるためです。
どちらにも一度に届けようとすると、アピールポイントが絞れない可能性があります。それでは効率的なマーケティングが行えません。
まず情報が届きやすいリピーターに向けて情報を発信し、認知度を広めてから新規顧客に向けた情報を発信するなど、タイミングにも注意しましょう。
リピーターと新規顧客のどちらかに施策を偏らせない
施策のバランスも大切です。リピーターの獲得は新規顧客の獲得よりもコストがかからず効率的で、高い収益が期待できます。だからといって、新規顧客の獲得を疎かにしないようにしてください。新規顧客はリピーターにつながるもので、その獲得は企業の成長に欠かせません。
リピーター獲得・維持の施策と新規顧客獲得の施策は、バランスよく行うことが大切で
リピーター獲得に成功した4つの事例
多くの企業がリピーター獲得の施策を行っており、成功している事例も少なくありません。これからリピーター獲得に向けた施策に取り組む際は、成功した事例を参考にするとよいでしょう。
ここでは、リピーター獲得に成功した代表的な事例を4つ紹介します。
1.ユニクロの事例
ユニクロは、大量生産・大量販売のマーケティング戦略を実施している大手衣料品メーカーです。ヒートテックやウルトラライトダウンなど季節ごとにコア商品を対象にしたキャンペーンを実施しています。キャンペーン期間中は、商品の特性や機能性などをテレビやWeb広告で広く告知しているのが特徴です。新聞折り込みチラシやアプリ、SNSなどを通してシーズンごとの新商品を期間限定価格で提供し、集客を図っています。
同社では、顧客の声をもとにしたマーケティング施策を行っていることも特徴です。実際にユニクロ商品を使っている顧客の意見・要望を分析して商品の開発・改良を行うなど、新商品の開発に顧客の声を取り入れています。
1995年には顧客の本音を拾って品質を改善するため、全国紙に「UNIQLOの悪口言って100万円」という広告を展開しました。
また、ユニクロでは顧客からの要望を集めるため、AIやチャットボット、音声認識の最新技術を導入し、電話やメール・チャットなど顧客のニーズに合ったチャネルを提供しています。顧客からの意見・要望はカスタマーセンターで分析し、商品の改善や新商品の開発、サービスの改善に役立てています。
2.ファンケルの事例
化粧品・健康食品メーカーのファンケルは創業以来、「お客様第一主義」を貫いています。「お客様の目線で、接客・サービスを評価していただこう」という目的のもと、2002年に「お客様の目委員会」を発足しました。主な活動として、ファンケルを利用している顧客に電話窓口の対応や店舗の接客対応などのアンケートを依頼し、サービスや接客の改善につなげる取り組みを行っています。
また、同社では、年間約37万件の顧客からの声を独自の「ヤッホーシステム」で一元管理しています。ヤッホーシステムとは「顧客の声が全社にこだまするように」と名付けられたもので、顧客の声がすべてデータベース化され、全従業員がいつでも確認できるというシステムです。
全従業員がヤッホーシステムでいつでも顧客の声を閲覧し、製品開発やプロモーションに反映できる環境が整備されています。このシステムを活用し、商品・サービス・接客など、あらゆる顧客に対し、スピーディーな改善活動が行われています。
また、ファンケルでは2022年の組織改正で「お客様視点推進事務局」を「VOA統括部」に改称し、広く顧客の声を収集、分析、活用していく取り組みを推進しています。
3.星野リゾートの事例
総合リゾート運営会社の星野リゾートは、顧客満足を高めながら利益を上げるという考え方に基づき、施設ごとに定量的な顧客満足度調査を実施しています。顧客にリピートしてもらうためには圧倒的な顧客満足度が必要と考え、アンケートの調査結果を数値化する取り組みです。
ネットでアンケートページを作り、独自に開発した分析ツールで結果を自動的に集計しています。予約から宿泊時・チェックアウトに至るまで、施設を利用するそれぞれのシーンでどう感じたかを尋ね、最終的に「全体の満足度」についても数値化できるようなアンケートです。
スタッフは調査結果をモニターで確認でき、星野リゾート全体で自分の施設がどこに位置するのかわかる仕組みです。管理者層が経営判断を下すときの参考にするほか、スタッフの意識改革にもつながっています。
また、同社では2022年、アフターコロナに向けてポイント会員プログラムやサブスクリプション(定額)サービスを始めるなど、リピーター獲得に向けた施策を推進しています。
4.塚田農場の事例
居酒屋チェーンの塚田農場はリピーターを維持することを重視しており、接客頻度と時間を増やすことに注力しています。接客時間の調査では、他の居酒屋チェーンが2~3分であるのに対し、塚田農場は7~8分という結果が出たということです、その結果、約60%というトップレベルのリピート率を実現しています。
リピーター率のアップに大きく貢献しているのが、独自のポイントサービス「名刺システム」です。来店時にQRコードを読み込むことを「出勤」と呼び、来店回数に応じて肩書が上がっていく「昇進」によって、段階に応じたポイントを付与する仕組みです。アプリには「電子名刺」が組み込まれ、役職のランクを管理できるようになっています。
名刺システムではポイント付与のほかさまざまな特典を用意しており、リピーター獲得を促進しています。
まとめ
リピーターは自社の商品・サービスを繰り返し利用してくれるため、売上の向上に貢献します。リピーターの獲得・維持は、新規顧客獲得よりもコストを得られながら高い利益を上げられるのが特徴です。リピーターは売り上げに貢献するだけでなく、周囲に商品・サービスを奨めてくれるなど新規顧客の獲得にもつながります。
リピーターの獲得には、こまめな情報発信や接触の機会を増やすなどの施策が必要です。また、リピーターの獲得・維持だけでなく新規顧客の獲得もバランス良く行わなければなりません。その際は、チャネルを分けることも大切です。
成功事例も参考にしながら、リピーター獲得を進めましょう。